二天一流

剣術指導もティーチングだけではなく考えさせるようにすべきか

剣術指導で教えすぎないこと

最新号の『月刊秘伝』(古武道専門の雑誌です)に、古武道界ではとても有名な武術家の先生の息子さんのインタビューが掲載されていました。

そのインタビューでは「自分は父から、丁寧に教えすぎると指摘される」「初心者にポイントを全て伝えようとするとパンクし、かえって上達を阻害する」というようなことが書かれていました。

このインタビューを読んで、私自身も「教えすぎ」を自覚する所があるので、これから教え方を工夫していきたいと思いました。

なぜ「教えすぎ」がいけないのかというと、

  1. 情報量が多すぎると上達を阻害する
  2. 自分で考えなくなる

という問題があるのだと思います。

教えすぎの問題①情報量が多すぎると上達を阻害する

私が指導している剣術に限らず、あらゆる技能の習得は「意識的な動きを無意識にできるようにしていくこと」の積み重ねであると思います。

剣術の場合、意識すべきポイントは「手の内(握り方)」「足構え(足幅や重心の位置)」「剣の軌道」「手首、肘、方、肩甲骨などの関節の使い方」「使う筋肉の意識」など多岐にわたります。動きとしては一瞬でも、瞬間的にすべてのポイントを意識できてなくてはならないのです。

なぜそれほど細かく意識しなければならないのかというと、正確に意識することができなければ、力任せの技になり、すぐに上達の限界が来るからです。

より細かく意識し、動きの質を高めていくことで、昔の達人の動きに近づいていくことができるのです。

しかし、ここで問題があります。

それは、人間が同時に意識できる数には限界があるということです。私の体感では、せいぜい3箇所くらいしか意識できないと思います。

そのため、最初からあらゆるポイントを意識して動くことはできないし、もしあらゆる部分を意識しようとすると、細部にばかり意識をフォーカスして全体としてまともな動きができなくなるのです。

そのため、最初に伝える情報量が多すぎると、かえって上達を阻害してしまうのです。

したがって、私が修業している流派では最初に基礎的な動きを鍛練する体系(前八)があり、それから型の稽古に入っていく体系になっています。つまり、無意識にできる動きを順番に積み重ねられるようになっているのです。

しかし、基礎の鍛練が足りていないと型に入ってから基礎的な部分の意識が十分でないことが判明し、型に対する指導に加えて、「手の内」「足幅」など基礎的な部分の指摘もすることがあります。

つまり、同時に指摘することがどんどん増えてしまうのです。

今の動きができる前から先に進んでしまうと、その後で伝える情報が増えすぎ、結局できなくなってしまうため、教えすぎないことが大事なのだということだと考えています。

教えすぎの問題②自分で考えなくなる

さらに、教えすぎにはもう1つ問題があります。それが「自分で考えなくなる」ということです。

私の剣術の先生は、これってどうしたら良いですか?と聞くと「君はどうしたら良いと思う?」と質問してくることがとても多いです。

この質問を受けると、自分で答えをひねり出さなければならないため考える力が鍛えられます。

しかし、このような質問ベースで進めず、すべてこちらから指摘して指導を進めると、教わる側の考える力が育ちません。その結果、一人で稽古していて課題にぶつかっても、正しい答えにたどりつくことが難しくなってしまいます。

とは言え、初心者にいきなり質問ベースの指導をしても正しい答えにたどり着くわけがないので、最初はこちらから教えること(ティーチング)がメインになるのは間違いありません。

つまりは、最初はティーチング中心に、教えすぎないように指導し、それから徐々にコーチング的に(質問ベースで)、指摘するポイントを増やしていく、という指導が一番バランスが良いのではないかと思います。

剣術の支部も少しずつ人が増えてきているので、メンバーが少しでも質の高い稽古ができるように、指導法ももっと工夫していきたいと思います。

ABOUT ME
ふかや
福岡出身、川崎在住。古武道の修業と仕事を両立するための道を模索中の28歳フリーランス。人の可能性を拓くことに興味を持ち、2018年からコーチングを学び、日々セッションの修業中。趣味は琉球古武道、読書。