■体を整える

筋トレと神経ケア、どちらが先か|神経系の土台を整える順序

2026年5月24日

「まず筋トレ」は本当に正しいのか

体の不調を感じたとき、「筋力が足りないから鍛えましょう」というアドバイスは最も一般的です。腰痛なら体幹トレーニング。膝が痛ければ大腿四頭筋の強化。猫背なら背筋のエクササイズ。

しかし、筋トレだけではOS(神経系の基盤)のバグは解決しないと私は考えています。この記事では、その理由を具体的に掘り下げます。

筋力はあるのに使えていない

実は、多くの「筋力不足」に見える問題は、筋肉自体が弱いのではなく、神経系がその筋肉に指令を出せていない状態です [1]

大殿筋の筋力テストでは問題ないのに、歩行時に大殿筋が適切なタイミングで発火しない人は非常に多い。筋肉は存在しているのに、神経系がそれを「呼び出せない」状態です。

こうした人に大殿筋の筋トレを処方しても、代わりにハムストリングスや腰の筋肉で代償してしまい、肝心の大殿筋には刺激が入りません。「使えない筋肉を鍛える」というのは矛盾なのです。

ポイント

筋肉が弱いのではなく、神経系がその筋肉に指令を出せていないケースが多い。神経回路をつなぎ直すことなく負荷だけかけても、代償動作を強化してしまう。

神経ケアが先、筋トレは後

JINENのアプローチでは、明確な順序があります。

Step 1:まず「つながり」を回復する(神経ケア)

使えていない筋肉への神経回路を再開通させること。具体的には:

  • 軽い触覚刺激(タッピング、セルフタッチ)で対象部位を脳に「認識させる」
  • ゆっくりとした微細な動きで、対象の筋肉が「ある」ことを脳に教え直す
  • 固有感覚のトレーニングでその部位のボディマップを書き換える [2]

Step 2:次に「使い方」を学ぶ(運動パターンの修正)

神経回路がつながったら、正しい運動パターンを学習します。たとえば、股関節の屈曲を「大腿四頭筋」ではなく「腸腰筋」で行うパターンへの書き換え [3]

Step 3:最後に「強くする」(筋トレ)

正しい神経回路が開通し、正しい運動パターンが定着してから、初めて負荷をかけた筋トレが効果を発揮します。

順序を逆にするとどうなるか

いきなり筋トレから入ると何が起きるか。

  • 代償動作が強化される:本来使うべき筋肉が使えないまま、代わりの筋肉が鍛えられる。問題が「強化」されてしまう
  • 痛みが悪化する:代償パターンに負荷をかけるため、不適切な部位にストレスが集中する
  • 努力しても効果が出ない:やる気があるのに症状が変わらず、モチベーションが低下する

逆に、神経ケアから入ると、眠っていた筋肉が目覚めて少ない負荷で大きな変化が得られます。代わりに過緊張していた筋肉も自然にゆるんでいきます。

筋トレは「手段」であって「目的」ではありません。体を楽にするという目的に対して、筋トレが最適な手段になるのは、神経系の土台が整ってからです。

補足

この記事はJINENボディワークの考え方をもとに、一般の方向けに解説したものです。紹介している研究は学習・参考目的のものであり、効果を保証するものではありません。症状が深刻な場合は専門家にご相談ください。

参考文献

1. Hodges, P. W. & Richardson, C. A. (1996). Inefficient muscular stabilization of the lumbar spine associated with low back pain. Spine, 21(22), 2640–2650. DOI

2. Jull, G. et al. (2008). Whiplash, Headache, and Neck Pain. Churchill Livingstone. Google Scholar

3. Sahrmann, S. A. (2002). Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes. Mosby. Google Scholar

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