ポリヴェーガル理論

自律神経は2つだけじゃない|「凍りつき」第3のモードが不調の原因になるしくみ

2026年4月24日

「休んでいるのに回復しない」という不思議

「ずっと家にいるのに疲れが取れない」「やる気が出ない」「体がだるくて動けない」——一見リラックスしているように見えるのに、全然元気にならない。

こういった不調を経験したことがある方は多いのではないでしょうか。

一般的に自律神経は「交感神経(アクセル)」と「副交感神経(ブレーキ)」の2つで説明されます。でも、もしそれが正しいなら、副交感神経が優位なはずの休息中に元気が出ないのは、説明がつきません。

その謎を解くのが、自律神経の「第3のモード」です。

自律神経には3つのモードがある

自律神経科学の研究から、私たちの神経系には進化の歴史に沿った3層の階層があることが提唱されています [1][2]

① 腹側迷走神経モード(安心・つながり)

最も新しく進化した回路。安全を感じているときに働き、表情が柔らかくなり、声に抑揚が出て、人と自然につながれる状態。これが本当の意味での「リラックス」です。

② 交感神経モード(闘争・逃走)

脅威を感じたとき、戦うか逃げるかの準備をするモード。心拍が上がり、筋肉が緊張し、呼吸が浅くなります。いわゆる「過緊張」の状態です。

③ 背側迷走神経モード(凍りつき・シャットダウン)

最も古い防衛反応。脅威が大きすぎて戦うことも逃げることもできないとき、体はシステムごとシャットダウンします。エネルギーを極限まで温存する「凍りつき」モードです。

ポイント

副交感神経には「安心(腹側)」と「凍りつき(背側)」の2種類がある。「休んでいるのに回復しない」のは、副交感神経が「凍りつきモード」で作動しているサインかもしれない。

「副交感神経=回復」ではない

ここで重要なのは、③の背側迷走神経も「副交感神経」の一種だということです。

つまり、副交感神経が優位であっても、それが凍りつきモードなら、体は回復どころかシャットダウン状態にあります。

「やる気が出ない」「体がだるい」「感情が麻痺したような感覚」「外に出たくない」——これらは、ブレーキを踏んでいるのではなく、ブレーカーが落ちている状態です。一見穏やかに見えますが、実は最も深い防衛反応が作動しているのです。

この3層構造を理解すると、「副交感神経を優位にすればいい」という単純な答えがいかに不十分かが分かります。大切なのは、副交感神経の中でも腹側(安心)の回路をオンにすることです。

安心モードに切り替えるために

JINENボディワークのすべてのプログラムは、まず腹側迷走神経(安心モード)を起動させることから始まります。

自律神経の臨床応用の研究では、いま自分がどのモードにいるかを自覚し、安全な関係性(共同調整)を通じて腹側モードへ移行させるアプローチが体系化されています [3]

具体的には、呼吸をゆっくり整える、胸まわりをゆるめる、耳を軽く触るといった身体ワークが、腹側迷走神経を選択的に活性化し、体に「安全信号」を送ります。

防衛モードや凍りつきモードのままでは、運動やストレッチをしても体は本当の意味で回復しません。 まず安心モードに切り替えてから、次のステップに進む——この順番がすべての土台です。

休んでも回復しないと感じているなら、それは「副交感神経が足りない」のではなく、「安心できていない」サインかもしれません。

補足

この記事はJINENボディワークの考え方をもとに、一般の方向けに解説したものです。紹介している研究は学習・参考目的のものであり、効果を保証するものではありません。症状が深刻な場合は専門家にご相談ください。

参考文献

1. Porges, S. W. (1995). Orienting in a defensive world: Mammalian modifications of our evolutionary heritage. A Polyvagal Theory. Psychophysiology, 32(4), 301–318. PubMed

2. Porges, S. W. (2007). The polyvagal perspective. Biological Psychology, 74(2), 116–143. DOI

3. Dana, D. (2018). The Polyvagal Theory in Therapy: Engaging the Rhythm of Regulation. W. W. Norton & Company. Google Scholar

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