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「自力」で動くと体は疲れる|自動化処理と他力のボディワーク科学

2026年5月21日

「力が入りすぎる」という悩み

JINENのワークに取り組む方からよく聞く声があります。「どうしても力が入ってしまう」「リラックスしようとするほど緊張する」。

この矛盾には、脳科学的な説明があります。「リラックスしよう」と意識した瞬間、前頭葉が活動を始め、随意的なコントロール(自力)が働き始めます。しかしリラックスとは、その前頭葉の介入を手放すことで起きるのです。

制御処理と自動処理

認知神経科学では、人間の情報処理を大きく2種類に分類しています [1]

制御処理(Controlled Processing)は、意識的な注意と努力を必要とする処理です。初めて自転車に乗るとき、バランスを取ろうと必死に考えながらペダルを踏む状態がこれにあたります。

自動処理(Automatic Processing)は、練習や経験の積み重ねによって意識を使わずに実行できる処理です。自転車に慣れた後、会話しながらでも走れる状態がこれにあたります。

JINENで言う「自力で動く」とは制御処理のことであり、「他力を受けて動く」とは自動処理に近い状態のことです。

ポイント

「自力」は前頭葉を使う。「他力」は重力・床反力という外力を利用する。JINENのワークは後者の感覚を練習することで、少ない力で動ける体をつくっていく。

「考える」と疲れる理由

近年の研究では、長時間の認知作業を行うと、脳の特定領域にグルタミン酸が蓄積し、認知疲労が起きることが示されています [2]

「体を正しく動かそう」と頭で考え続けると、脳は疲弊します。制御処理は資源を消費するからです。

一方、重力に乗って動く感覚、床から突きあがる力を受けて立つ感覚をつかんでいる人は、意識の消費が少ない。長時間の稽古でも疲れにくいのはそのためです。

JINENの「他力」とは何か

JINENで言う「他力」は、宗教的な意味ではなく、物理的な外力のことです。

  • 重力:地球が引く力。これに逆らわず、乗ることで動く
  • 床反力:地面が体を押し返す力。「床支点」として活用する
  • 慣性:動いている体の勢い。次の動きに変換する

これらを「もらう」技術を練習するのが、JINENの基本スタンスです。ヨットが風を受けて進むように、体の中に外力が通る道を作ることが目標になります。

具体的な練習:

  • 立っているとき、「自分が立っている」ではなく「重力で地面に引き寄せられている」と感じ直す
  • 歩くとき、「脚で踏み出す」ではなく「前に倒れる体を脚が支える」と意識する
  • 腕を持ち上げるとき、力を入れるのではなく「床から突きあがる力を背中から腕に伝える」感覚を探す

自力を手放す練習は、最初は難しく感じます。しかし体がその感覚を覚えると、少ない力で大きな動きができるようになっていきます。

補足

この記事はJINENボディワークの考え方をもとに、一般の方向けに解説したものです。紹介している研究は学習・参考目的のものであり、効果を保証するものではありません。症状が深刻な場合は専門家にご相談ください。

参考文献

1. Schneider, W. & Shiffrin, R. M. (1977). Controlled and automatic human information processing: I. Detection, search, and attention. Psychological Review, 84(1), 1–66. DOI

2. Wiehler, A. et al. (2022). A neuro-metabolic account of why daylong cognitive work alters the control of economic decisions. Current Biology, 32(16), 3564–3575. DOI

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