「ストレス社会」などと言われて久しいですが、世の中には心身のケアについて書かれた多くの本やネット記事が出回っています。
しかし、私の周りを見渡すと、自分の心や身体をしっかりといたわっている人は意外にも少ないようです。多くの方は、単に心や身体を「鍛える」方向の努力をしていたり、サプリメントや健康食で手っ取り早く健康を手に入れようとしているように思われます。
特に、多くの男性は、ある程度の年齢になるまで自分の心・身体のことにしっかり向き合っておらず、そのために心を病んだり、攻撃的になったり、孤独感にさいなまれたり、他人にマウントを取って自分を保とうとしたり、、、とさまざまな問題を抱えることに繋がっているようです。
現代の日本社会では、自分の心身をしっかりいたわれなければ、社会でサバイバルすることが難しいようです。しかし、自分の心身を「いたわる」ことは、社会でのサバイバル以上によりよく生きるために必須のことです。
この記事では、多くの現代人、特に男性に、心身をいたわることがなぜ大事なのか、いたわるにはどうしたらいいのか、私が普段考えていることを書いています。
1章:男性は自分のことをいたわらない人が多い
私の周りを見たわすと、若い男性ほど自分の心や身体をいたわらない方が少なくありません。「自分は健康だから」「自分は強いから」「ちょっとくらいの不調、なんともないから」などと心身を雑に扱ってしまう方が多いのです。
このように考えてしまう理由の1つは、男性は女性より生物学的な事情から、若いうちは身体のことを考えなくていいというものがあります(女性のように生理がない、など)。
また、女性の方が見た目で評価されやすく、美容に関心を持ちやすい(持たされやすい)一方で、男性は女性に比べればそこまで力を入れなくても良い、という文化的な理由もあるでしょう。美容のためには、肌や髪、毛、スタイルなど身体と向き合わざるをえませんし、見た目の健康のために、心の問題(明るくいよう、元気でいよう、など)とも向き合う機会が増えるからです。
さらに言えば、男性は特に子供のころから「弱みを見せない」「強くないといけない」「負けてはいけない」という教育を受けやすいのも、自分のことをいたわらない人が多い理由になっていると思います。
「弱みを見せない」ことが、「自分の弱みと向き合わない」「弱みを隠す、ないことにする」という態度に結びつく。
「強くいないといけない」ために、「自分は強い」「心身をいたわらなくても問題ない」という態度と結びつく。
「負けてはいけない」ために、他人に弱みを見せられず、弱みや傷を表現できず、自分でも自覚できなくなってしまう。
このような事情があると思います。
子供のころに、自分の心身の傷や弱みを訴えても、親やまわりの大人から「そんなの大したことない」「気にするな」「泣くな」と、否定的に対応された経験は誰にでもあるはずです。
このような教育は、ある面での精神的な強さを育てることにはなっているでしょう。
一方で「弱みと向き合えない」「強くあろうとし過ぎる」「負けを認められない」という態度にも結びついてはいないでしょうか。そのために、自分自身が持つ弱さや傷をスルーしてしまい、溜まりに溜まったものが爆発してしまう。
その結果が、精神疾患や周囲への攻撃的な態度、孤独感、イライラなどの問題に繋がるのだと思います。
さらに言えば、生活習慣の乱れ、ネット・スマホ・ゲームやアルコールなどへの依存、仕事でのストレス、などとも関連していると考えます。
このように、主に子ども時代から身につけた男性的な考え方によって、多くの男性が心身をちゃんといたわらないことになっているのではないでしょうか。
2章:心身をいたわらないといずれ壊れてしまう
2-1:心だけでなく身体をいたわること
「弱みや傷を乗り越えることで人間は強くなれる」という考え方もあると思います。
実際、そのようにして強くなってきた人も多いでしょう。私自身、そういう経験はもちろんあります。
しかし、弱みや傷を乗り越えるためには、まずはその弱みや傷と正面から向き合い、それを乗り越えることが必須です。一方、自分の弱いところや過去に傷ついた経験を否定し、向き合わず、見栄や強がりで「強く見せる」ことで乗り越えた気になっている、という人もいるように感じています。
そのような方は自覚していなくても疲れ果てていて、身体のさまざまな部分が緊張したままになっていたり、精神的にも消耗し怒りっぽくなる、イライラする、落ち込む、やる気が出ない、抑うつ状態、孤独感、などさまざまな問題を抱えているようです。
このような精神的な状態に対して、メンタルからアプローチする方法はよく知られています。カウンセリング、コーチングなど専門家からサポートを受けるものもあれば、自分での対処法に関する情報も多くあります。
しかし、私が思うのは、メンタルからの対処だけでは改善しない方も多いだろうということです。なぜなら、人間の心と身体は深く結びついており、身体の状態が悪い限り、精神的な問題も大きくは変わらないと思われるからです。
たとえば「全身がひどく緊張していてコリだらけ」という身体の状態の時に「精神的には明るく幸福感に満ちている」という精神の状態でいられる人はいるでしょうか?少なくとも、多数派の方は、身体の状態が悪ければ精神面にも悪影響があると思われます。
そのため、そもそも心身をいたわっていない人や、精神的な問題としてのみ不調に対処し、身体のケアを怠っている人などは、ゆくゆくは大きな問題を抱えることにもなりかねないのです。
2-2:社会で戦うためにいたわるのではないということ
仕事など社会生活をこれまで頑張ってやってきたという人は、このような「いたわり」の必要性を「社会でちゃんと生き抜いていくため」にやるものだと捉えてしまうことも多いようです。
しかし、心身をいたわることは、社会で生き抜くためでも、仕事をもっと頑張るためでもありません。もちろんそれらの目的も満たされるでしょうが、もっと大事なのは、単に健康に、よりよく生きるということです。
ずっと頑張ってきた人は、心身に不調がなく、100%元気であるという「快」の状態を忘れてしまっています。「快」の状態を想像すらできないのです。実は心身が元気で「快」の状態になっているだけで満たされるのに、その「快」がなく「不快」が日常になっている。そのため「不快」を解消するために、よけいな消費をしたりしたくなる。今の生活を続けるだけのために、より頑張らなければならなくなる。
そのために、もっと頑張れるように健康を求めてしまう、という方が多いようです。
しかし、そのような頑張りの生活を続けるために心身をいたわろうとしても、うまくいきません。
何かの目的のために心身をいたわるのではなく、心身をいたわって元気に生きること、それ自体を目的にすることをおすすめします。
そうすることで、本当に元気な状態、身体が「快」の状態になっていることを思い出せれば、余計な頑張りは必要ないと気付けるはずです。
3章:心身をいたわる方法
心身をいたわる方法など、具体的に書くよりも「自分が心地よいと思うこと」をひたすら追求した方がいいように思います。人から提案された答えを知って、それを実行して効率よくいたわろう、などと考えていては本当にいたわることにはなりません。それは、またアタマの働きに支配されており、効率主義的です。そうではなく、自分の身体に「快」の状態がどういうものか自分で聞いてみて、感じてみて、少しずつ「快とは何か」を見つけていく。そのプロセスすべてが「いたわり」なのです。
とはいえ、私が提案する方法も何かのきっかけにはなるかもしれませんので、簡単に紹介してみます。
3-1:身体のプロにサポートしてもらう
よい整体に行けば、身体の状態が整えられて、精神的にも状態がよくなります。
身体の不調(肩こり、腰痛など)がよくなることで心が楽になるとか、身体がリラックスすることで精神的にもリラックスできるという効果が期待できます。
個人によって合う施術、合わない施術もあると思われますので、いろいろなところに行ってみるといいと思います。
男性は、整体に行っても継続しない方が多いようですが、継続することで身体の状態がよりよくなり「快」の状態に近づいていけるでしょう。「いたわり」は続けて日常化することが大事です。
3-2:心地よい運動をする
自分にとって心地よいと感じられる運動をすることも大事です。
男性の場合、運動というと昔やっていたスポーツや筋トレ、ランニングなどを選択する方が多いようです。しかし、男性の多くはやはり文化的な背景から、きつい運動、鍛えられる運動、勝敗が分かるスポーツなどを選択しがちです。
そこで、そのような運動ではなく、あえて「心地よいかどうか」を基準に新しく運動を始めてみることをおすすめします。
たとえば、ヨガ、ピラティス、アニマルフロー、ダンスなどはいかがでしょうか。
身体への負荷は軽く感じられるかもしれませんが、全身運動で姿勢や動作を改善することが期待できます。
3-3:五感を刺激する
五感を刺激することでも、心身をいたわることができます。
現代人の生活は、特に視覚を使う側面が大きいです。それも、平面な画面を同じ距離で見続ける、ということが多すぎます。
そこで、視覚的にはビジョントレーニングのようなことを行うと、視覚を多様に使えるため身体の調子がよくなることがあります。
また、視覚以外の感覚を意識的に使うことも大事です。
具体的には、下記のようなことです。
- 嗅覚:お香をたく
- 味覚:すっぱいもの、苦いものなど、普段は食べない味や食感のものを食べる
- 触覚:自分の身体の中で緊張しやすいところ、違和感のあるところなどをさする。土の上をはだしで歩く
- 聴覚:部屋を暗くして静かに音楽を聴く、自然の中で耳をすませる
このように視覚以外の感覚を意識的に使うだけで、リフレッシュされることも多いです。ぜひ試してみてください。
他にも、心身をいたわる方法として、湯船に入ってゆっくり入浴する、ゆっくり散歩する、普段行かない場所へ行く、リラクゼーションを受ける、動物と触れ合う、などいろいろな方法があります。
自分で心地よいと感じることを見つけて、生活の中に取り込んでみてください。
■剣術師範、整体師(身体均整師)、ライター。セルフケア・トレーニングのオンライン教室運営中。
■池袋周辺で施術・トレーニングを行います。【旧:ふかや均整院】
■現代人の脳・感覚の使い方の偏りや身体性の喪失を回復するために【suisui】という独自のプログラムをオンライン教室中心に運営しています。