コーチング

『子供は40000回質問する』を読んで子供のような知的好奇心を取り戻そう

2019年1月29日

子供は40000回質問するのレビュー

最近「質問」「問い」人間の思考力、認知能力に関することに興味があって本を読んでいます。

私が人間の認知能力、機能に興味を持つようになったのは、学生時代に「認識論」について学んでからでした。最近は遠ざかっていましたが、コーチングを学ぶようになって興味が再熱し、コーチングの勉強も兼ねて読んでいます。

その一つが『子供は40000回質問する』という本です。

この本のテーマは、人間の好奇心はどのように育まれるものなのか、好奇心とは何なのか、といったことです。

この本から、人間の認知能力を向上させる原動力になるのは好奇心であり、好奇心を育むためには「問い」が大事なのだということを再認識できました。

『子供は40000回質問する』から学んだことを書きます。

人間の好奇心には2つの種類がある

まず、著者は人間の好奇心には2つのものがあると言います。

  • 拡散的好奇心・・・身の回りのすべてに好奇心が湧くもの
  • 知的好奇心・・・特定の対象に対する奥深い好奇心

拡散的好奇心とは、赤ちゃんが身の回りのすべてに興味を持つようなもので、人間が本能的に持っているものなのだそうです。

しかし拡散的好奇心は、周囲のすべて好奇心が拡散している状態のため、集中して思考したり深い理解を得たりすることはできません。

それに対して、知的好奇心とは特定のことに対して奥深い好奇心を持つものです。生産的な知的活動は、この知的好奇心が原動力となって行われるのだそうです。

この分類は、自分の過去を振り返っても理解できます。

私は十代の頃はたくさんのことに興味があり、大量の本を乱読していたことがありました。しかし、このころ読んだ本は多岐にわたっていたため、今思い返そうとしてもほとんど思い出せません。

それに対し、乱読期から徐々に「武道・武術」「人間の身体の仕組み」「経済学」など特定の分野に興味がフォーカスされるようになってからは、一つの分野を掘りさげて読書するようになり、ある程度体系だった知識を得ることができました。

これはまさに、拡散的好奇心と知的好奇心の一例なのではないかと思います。

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拡散的好奇心が刺激されやすい現代社会の弊害

大事な事は、人間は放っておけば拡散的好奇心で行動するばかりになり、知的好奇心を身につけられないということです。そして、知的好奇心が身につかなければ、何らかの生産的な活動は難しいようです。

なぜ、人間は本能的に拡散的好奇心で動くのか。

それは、もともと人間が文明らしい文明を持つ前は、周囲にさまざまな危機があり、常に周囲に注意を持っておかなければならなかったからです。そして、現代人もその頃の名残で、本能的に拡散的好奇心を持っているのです。

さらに、現代社会は拡散的好奇心が刺激されやすい環境にあります。

それは、ネットやTV、広告が、人の注意を奪うように設計されているからです。

特にネットには、そこら中にリンクが貼られており、画面のあちこちに広告があります。また絶え間なくLINEやSNS、メールの通知が来て、注意力を奪い続けます。

こうしたネットの仕組みは、人の拡散的好奇心を刺激しますが、一方で深く考える習慣をなくし、いろいろなことを「考えずに調べて解決」することができるようになるため、知的好奇心が育まれる機会はなくなります。

つまり、現代人は知的好奇心を育むことが、より難しくなっているのです。

このあたりの話は『ネット・バカ』にも詳しく書かれていました。

では、生産的、文化的な活動をするために知的好奇心が必要だとすると、どうしたらそれを育むことができるのでしょうか。

知的好奇心を育むためには

そもそも、子供のころは本能的に拡散的好奇心で活動することはすでにお伝えした通りです。

そして、子供時代に拡散的好奇心で活動することは、子供の成長にとって良いことなのだそう。

なぜかというと、人は「すでに知っていること」や「まったく知らないこと」よりも「少しだけ知っていること」に一番興味を持つそうです。そのため、子供時代に広い領域に拡散的好奇心を持って活動し「少しだけ知っている」領域が広がることが、その後の文化的活動の基盤になる。

さらに、変化の激しい時代についていくためには広範な領域に知識を分散投資していた方が良いからです。

では、子供時代に好奇心を育むためにはどうしたら良いのか。

そのためには「問い」の数を増やすことが大事なのだそうです。

問いを増やすと好奇心が育つ

本のタイトルにもなっていることですが、子供は2歳〜5歳までの間に4万回質問をするそうです。それだけ周りに好奇心を持っているのですが、ここで大事なのが、子供が好奇心のままに活動できることです。

したがって、子供が好奇心のままに活動できるような環境を作っておくことも大事なのですが、もっと大事なのはネットの使い方。ネットを使うと生まれた疑問に対して簡単に答えが出てきてしまうため、問いかけが減ってしまいます。

問いが減るとその分好奇心が減ってしまうのです。

そのため、子供の好奇心を育むという点では、ネットを安易に使わせすぎないようにすることが大事なのだそう。

さらに言えば、経済格差は好奇心格差を生み、好奇心格差が経済格差を再生産させてしまう可能性についても言及されていました。

この本で紹介されていた研究では、低所得層の子供ほどデジタル機器と接している時間が長く、その分集中力や学習時間が減少している。そのため、好奇心を減らすことになってしまっているそうです。

さらに、好奇心を育むには、いかに多くの「問い」をするかが大事なのですが、デジタル機器と接する時間が長いと大人と対話し、互いに質問を投げかける時間が少なくなってしまい、その「問いの少なさ」が好奇心の格差につながり、さらには経済的・社会的格差に繋がるのだそうです。

加えて、従順さや礼儀正しさを求める文化では、子供の質問は少なくなる傾向があるそう。

これらをまとめると、子供の教育のためには、

  • ネットの活用方法を検討すること
  • 親が子供と対話、質問する時間を増やして子供の質問の数を増やしてあげること
  • 従順さ、礼儀正しさより気軽に質問ができる家庭環境を作ること

などが大事そうですね。

では、好奇心を育てるために、学校ではどのような教育が望ましいのか。

その答えは、意外にも「好奇心」中心の教育ではなく「知識」中心の教育なのだそうです。

「知識中心」の学校教育が好奇心の基盤になる

  • 知識の伝達、押しつけ、詰め込みは教育の害悪
  • 子供に好奇心のままに学ばせる
  • 知識よりも経験や創造性や思考力を重視

こういった教育方針について、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

こうした進歩的な教育方針は、実は18世紀のとある本に起源があるそうです。

それが、ジャン・ジャック・ルソーの『エミール』です。

「社会契約論」などで有名なルソーですが、彼が自分の思想から理想の教育論について語ったのが『エミール』なのですが、ここでまさに好奇心、創造性を重視した「好奇心駆動型」の教育論の系譜がはじまったのです。

こうした教育論は、現代でもモンテッソーリ教育として実現しているのですが、著者によると、こうした教育は子供の知能向上には役立たず、実際には知識詰め込み型の教育の方が役立つのだそうです。

なぜなら、創造力や思考力、好奇心のベースになるのは知識であり、人間は知ることが増えるほど「知らない」という空白を埋めるためにさらに好奇心を強くし、学ぼうとするからです。

したがって、すでに十分な知識を持っている子供に対しては「好奇心駆動型」の教育でも効果はあるそうですが、十分な知識を持たない子供には「好奇心駆動型」の教育は役立たず、むしろかえって知識を持つ子供との格差を広げることになってしまうため、推進すべきではないというのが著者の考えです。

なぜ好奇心駆動型の教育より、知識詰め込み型の教育が優れているのか?

その答えについて、著者は以下のように答えています。

  • 人は独学では間違った知識を得たり、学びに対してモチベーションが続かない。そのため学校や教師がいる場で知識を習得する必要がある(好奇心任せでは間違った知識を得てしまうリスクがある)。
  • 既存の知識がアイディアを生み出す創造力を邪魔すると考えられることがあるが、実は既存の知識の組み合わせたアイディアなのだから、知識がなければ創造性も生まれない。
  • 知識があるために、人間は無駄なことまで考える必要なく創造的思考や瞬時の判断ができるのであり、知識がなければ無駄なことまで考えなければならなくなる。
  • 人間が十分に思考するためには「作業記憶」領域に空きがある必要があるが、知識がないと、作業記憶領域で情報を保持しつつ考える必要があり、思考力に割けるリソースが少なくなる。知識が長期記憶に定着していれば、作業記憶の空きが作れるため、思考力に割けるリソースが多くなる。

このような議論は、実は他の本でも読んだことがありました。

斎藤孝さんの本で読んだのですが、知識詰め込み型の教育として批判されがちな、昔の日本で行われていた「『論語』の暗記」などは、実は思考力の発達に貢献していて、明治や大正、昭和初期に活躍した世界的学者、ノーベル賞学者たちは詰め込み型教育を受けていたのだそうです。

まとめると、子供の知能を向上させること、さらに知能向上の原動力になる好奇心を育むためには、ベースとしての知識があるほど良いということですね。

まとめ

『子供は40000回質問する』は好奇心の偉大さから鍛え方まで、様々な例から解説されていてとても学びやすいものでした。

私自身はかなり好奇心が強い性格だとは思いますが、たまに「拡散的好奇心」に流されて、その後に残るものが少ない、生産的ではない学びをしてしまうことがあります。

おそらく、好奇心が強い人というのは、拡散的好奇心優位の時期と知的好奇心優位の時期、つまり広範なことに興味が向く時期と、一つのものに興味が絞られていく時期が交互に来るのだと思います。

そこで自分が大事だと思ったのは、意識的に興味を絞っていって、生産的な学習やアウトプットを設計しておくことです。

こうしてブログでアウトプットすることはその一つですし、今集中すべき分野をある程度決めておく、学びのテーマを決めておくだけでも生産的になると思います。

これからも、自分の好奇心の強さを活かし、強化していく上で必要になるであろう知識は『子供は40000回質問する』から身につけることがでた気がします。

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