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高橋和巳『子は親を救うために「心の病」になる』の要約・感想

2021年4月21日

仕事の関係で、親子関係に関する本を読む機会があり、高橋和巳『子は親を救うために「心の病」になる』(ちくま文庫)を読んだ。

子どもの「心の病」やそれに伴う問題と言うと、摂食障害、自傷行為、暴力、非行、引きこもりなどさまざまだが、その多くが親子関係に起因している。そして、子どもの心の病は、親が抱えた心の問題を引き継いで生まれるものだのだ、というのがこの本のポイントであると捉えた。

子どもの「心の病」と言うと、自分とは関係がないと思われる人も多いかもしれない。しかし、この本でも書かれているように、大人は自分が抱えてきた苦しみに無自覚であり、なかなかそれを客観的に捉えられないものである。そして、それが、子どもが生まれたときに子どもへの押し付けとなり、子どもに無理をさせ、病にさせてしまう。

とすれば、いつか親になるかもしれない、多くの大人にとって重要なテーマである。いや、それだけでなく、「苦しみ」を知らず知らずに抱えているかもしれない、すべての大人にとって、読むべき本ともいえる。

『子は親を救うために「心の病」になる』の要約

子どもの「心の病」については、すでに多く報道され知られているところである。

実際、精神科医の著者の所には、子どもの「心の病」について相談にくる親が多くおり、この本の紙幅の大半は、そのような親子の事例である。

子どもの病の原因は親の苦しみにある

多くの親は、なぜ子どもが病んだのか分からず、自分なりに対処してきて、限界を迎えて相談にくるようである。親は、「子どもが病んだ原因が知りたい」「子どもを治す方法が知りたい」と思っているのだが、著者と話すうちに、自分自身が抱えている問題に気付いていく。この本の事例に出る親子は、みな親自身が病んでいることが明らかになっていくのである。

結論を言ってしまうと、子どもが心を病んでしまうのは、子ども自身の問題ではなく親が心に問題を持っているからなのである。

親が子ども時代に、自分の親から押し付けられ、受け入れてきたさまざまな「苦しみ」。

それは、

「我慢することが大事」

「人には頼らない、甘えてはいけない」

「自立しなければならない」

「弱みを見せてはいけない」

といったものである。

親自身が子ども時代、「もっと甘えたかった」「我慢したくなかった」と思っていた。しかし、自分の子どもが生まれたときに、子どもにも同じように「甘えてはだめ」「我慢しなければだめ」と押し付け、子どもに苦しみを押し付けてしまう。こういうことは、多くの家庭で多かれ少なかれ生まれているのではないだろうか。

親は、自分が子ども時代に抱えた葛藤をそのまま引きずり、大人になっても葛藤を持っていることに無自覚なまま生きている。その結果、苦しみを抱えている。そのため、子どもが甘えたり、我儘を言うと、「甘えるな」「我慢しろ」と言ってしまう。子どもが甘えてくること、我儘を言うことは、自分が子ども時代は許されなかった。そのため、子どもの甘え、我儘が許せなくなる

。子どもは、甘えたり我儘を言っても、それを親が聞いてくれないため、最後の手段として心の病になるのである。

なぜ子どもは病んでしまうのか

子どもは、親のことが好きであるため、親に合わせようとする。親に合わせて好きになってもらおうとする。そうして親に合わせていることを、親は気づかない。そして、子どもだけが我慢し不満を溜め、それが心の病になる。また、攻撃的な行動、反抗になる。

子どもは学童期に親の生き方を学ぶため、思春期には親の苦しみを背負っている状態となる。これから自立していく上で、子どもは自分の苦しみを解決しておきたい。そのためには、親の苦しみが取れないといけない。そこで、病となってそれが表出する。

では、どうしたら、子どもの病は治るのか?

それは、ここまでの内容でほぼ答えが出ている。

子どもの心の病を解決するためには、親が自分の抱えている苦しみに気づくことが必要不可欠なのである。

そうすることで親子で抱えている苦しみが明らかになる。それで根本問題が解決されるため、子どもの心の病が自然に治る。

この本の中では、精神科医に対して親が相談し、ただ自分の話を聞いてもらう中で、親が自分の苦しみに気づいていく。それを、著者はただただ聞いてあげるのだ。自分の感情が認められてこなかった人は、ただ自分のことを人に話すだけで、自分の存在を認めることができるようになる。そうして、心の問題から解放されていく。

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感想

「心の病」の問題は、子どもに限らない。大人の「うつ」「適応障害」「自殺」など、心の病がすでに日本では大変大きな問題になっている。

大人が、子ども時代から無自覚に「苦しみ」を引きずったまま成長しているというケースは、非常に多いのではないだろうか。特に、日本は文化的に、子どもを厳しく育てる家庭も少なくないように思われ、そういう家庭では、「苦しみ」の再生産が行われているのではないだろうか。

だからこそ、この本の内容は、その再生産を断ち切り、自分が苦しみから解放されるためにも、多くの人が読むべきものだと思う。

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