心理系

加藤耕三『「自分の働き方」に気づく心理学』青春出版社

2021年1月18日

フリーランスとして働く中で、自分の働き方をどうしていくか?という問題は頭を離れることがない。フリーランスは、働き方が自由な一方で、すべてが自己責任、実力がなければ仕事は広がらず、厳しい世界だと思う。自由には責任が伴うという事実を、ひしひしと感じる。

一方、厳しい世界だからと言って仕事に必死になりすぎると、先のことを考える余裕がなくなり、ふとしたときに将来に漠然とした不安を感じることもある。

こうして考え続ける中で、一つ自分なりに考えて得た真理がある。

それは、自分のことを大きく見せようとか、見栄を張ろうとか、「こう見られたい」とか、人に勝ちたいとか、優れている自分を見せたいとか、そういう邪な思いがあると行き詰るということ。

フリーだろうが何だろうが、働く上で大事なのは、どういう仕事がしたいかという理想と、どうすれば食べていけるかという現実に折り合いをつけていくことだ。しかし、その根っこのところは、自分の価値観が規定している。その価値観が邪な思いに縛られ歪んでいると、間違った働き方を選んでしまうという。

その結果、優れた自分を見せようと強迫的に働きすぎて体を壊したり、本当は好きではない仕事を取っていこうとして、仕事にやりがいが感じられなくなったり。自分の弱い所、ダメなところを人に見せられず、病んでしまったり。そういうことに繋がり得るように思う。幸い自分はそこまで追い詰められたことはないが、それでも近いものを感じたことがある。

、、といったことを漠然と考えていた中で、偶然出会ったのが『「自分の働き方」に気づく心理学』というこの本である。

『「自分の働き方」に気づく心理学』の内容

普段なら、このタイトルなら手に取ることはなかったと思う。しかし、仕事がら心理学、特に親子関係に関する本を読んでいた中で、著者である加藤耕三氏の本を何冊か読むことがあり、この本のことも見つけたのであった。

この本の中身を簡単にまとめると、

  • 子ども時代に親子関係をこじらせ、愛着の問題を抱えると価値観を歪ませてしまうことがある
  • 価値観を歪ませてしまうと、好きではない仕事、やりがいのない仕事についてしまう
  • その結果、自分から不幸になっていく
  • 重要なのは、どういう仕事をしているかより、その仕事に自分がどういう態度で向かっているかである

ということである。そのため、具体的な仕事探しについて考える前に、自分の価値観が歪んでいないかよく考えること、ありのままの自分を受け入れることが大事、そういう話だと自分は捉えた。

「心に葛藤を抱えている限り、グリーン車の切符を買っても天国には行かない。」

というこの本の冒頭に出てくる言葉は、名言であると思う。

そもそも、子ども時代に何らかの劣等感を深くもってしまい、それから心に葛藤を持ってしまう人は多いように思う。成長の段階のどこかで、もしくは大人になってから克服できることもあるだろうが、そうならない人も少なくないのではないか。

特に、現代は、大学受験、就職、仕事、転職、恋愛、、さまざまな場で自分を強く、有能で、優れている人間であると証明しなければならない。そういう社会になってしまった。そのため、自分を有能にすること、有能に見せることについて書かれたノウハウ本が多く売られている。都会ほどそうだろうが、こういう社会で生活していれば、劣等感を持ったままの人も多くなるだろう。また、自分が本心から好きなこと、関心があることを仕事にするより、社会的ステータスを求めて会社に入る、という人も少なくないだろう。そのような環境で働くうちに、精神を病んでしまう場合も。

著者は、こういう歪んだ価値観を持ったまま、働くことでは、幸福に離れないという。

「欲求不満な人は小さな世界に住んで、その今の人間関係の中でチヤホヤされたい。視野を広げるということは、今の小さな人間関係の世界から心理的に抜け出すことである。」

「深刻な劣等感のある人には幸せになるためのエネルギーは残っていない。」

「人生の勝者とは自分が自分自身であることを喜べる人である。職業に偏見を持っている人は、自分自身であることを喜べない。」

「悩んでいる人は、自分についての思い込みも強いが、職業というものについての思い込みが強い。働くということの思い込みも強い。」

「仕事をする目的が、自分のイメージを高める事だから、努力が実を結ばない。(中略)つまり目的が非現実的に高すぎたり、適性を無視したものだったりする。そうして生きるエネルギーを無駄に消費する。」

自分でも、働く中で少しずつ、自分の軸より社会の軸で考えてしまうようになっていることに気づいた。だから、このような本も読んだのだが。

そのため、仕事探しの前に、自分の価値観の歪みを自覚することが大事なのである。

「技の人は時間の使い方が上手い。時間が積み重ねられていく。」

「生きがいを持って生きるためには、まず歪んだ価値観を直すことが先決である。」

「『今の自分でいい』と思える人は、自分の恵まれた環境にも注意が行く。」

「自己疎外され、他人とのつながりをつくれない人にとって、最後の砦は自己栄光化である。それによって自分の安全を守ろうとする。」

「なぜすることが見つからないかというと、自分を偉大に見せることばかりをしようと考えているからである。」

価値観の歪みに気づき、自分の本心を理解することで、本当にやりがいのある仕事ができるようになる。

そうなると、今の自分の仕事に不満を持っていたとしても、考え方が変わり、今の仕事を好きになることもあるかもしれない。

こうして、考えるきっかけがあることは良いことだ。考えるきっかけを持てたという点で、最初から天職を見つけた人より、今後失敗するリスクを避けられるだろう。

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