■心を整える

魚住絹代『子どもの問題いかに解決するか』の要約・感想

2021年4月22日

法務教官として、非行少年に長年携わってきた著者が、子どもの抱える問題を解決する方法を解説しているのがこの本である。

『子どもの問題いかに解決するか』の内容・要約

いじめ、不登校、発達障害、非行といった子どもの問題を、どうしたら解決できるのか。

大人にとっては、子どもに問題行動があると早く解決してしまいたいと思う。そのため、解決力のある対策を考え、それを何とか実践しようとするのであろう。

しかし、子どもに合った対策でなければ、子どもの行動は改善しない。結果、逆に子どもとの関係が悪化し、子どもの行動もエスカレートする。

特に、問題行動が激しくなってしまう場合は、下記のようになってしまうという。

「そして、我慢して我慢して上って、抱えきれないほどにアップアップしてきたある日、何かをきっかけにぷっつりとこれまでの我慢の糸が切れ、転がりだす。転がりだすときの言葉は、共通している。それは、「もう、どうなってもいい」だ。(中略)親も兄弟も、学校も勉強も、友だちも部活も、進路も、将来の夢までもすべてを放り投げるほどの力である。(中略)坂道の階段は、人とのつながりが切れていく孤独の階段だ。転がりだした時点で、自分自身とのつながりも切れる。孤独の歴史が長く、不快ほど激しい行動化になってしまう。」(256頁)

子どもの問題の原因の多くは愛着にある

著者は、多くの問題を抱えた子どもと関わる中で、子どもの抱えた問題の原因が、愛情、愛着と関わっていることが分かってきたという。子どもは、親子関係の中で自信や自己肯定感をなくしてしまう。そこから、様々な問題行動が生まれる。

もちろん、すべての問題行動が愛着の問題と単純に言い切れるものではないだろう。しかし、表に出ている問題行動そのものを変えようとしても改善されないことが多く、その根本を見ていくと愛着の問題がある場合が多いようである。

自信や自己肯定感は、親との関係から生まれるものであるため、それらに欠ける子どもの親は、何らかの問題を抱えていることが多い。そのため、まずは親が明るく、元気にならなければならない。親の心が安定することで、子どもを受け入れられるようになり、子どもは自信を取り戻すことができる。

著者によると、子どもの問題は下記の2つのところに現れやすいという。

  1. その子にとって安心感と居場所が確保されているか(家庭、学校において)
  2. その子が存在価値、自己有用感を味わえているか

複雑な問題を抱えているようでも、これらのポイントを見ていくと突破口が見つかる場合があるという(72頁)。

また、愛着の問題を抱えた子どもというのは、特徴的な言動があるという。

「もっとも見えやすいのは、ネガティブな言葉遣いや態度である。暴言や暴力、批判的で、攻撃的な言動や態度というものは、安定した愛着の中で育っていないことを示す最たる特徴である。頼っている人、頼るべき人に対しても、不快な点や不満のほうばかりを強く感じ、否定的な思いを抱きやすい。」(81頁)

このような特徴は、愛着に問題を抱えたまま成長した、大人にも見られそうである。

子どもの問題を解決する方法

こういった特徴を持ち、さまざまな問題を抱えた子どもは、親子関係が変わるだけで大きく変わっていくという。

「親に受け止めてもらうだけで、子どもが明るくなり、落ち着いていくということは多い。」ただし、「親自身が受け止められて育っていないと、子どもをうまく受け止められず、双方行き詰ってしまいやすい。」(89頁)という。

やはり、子どもの問題を解決するためには、親が心に抱えた問題、育ちの中で抱えてしまった苦しみを自覚し、そこから解放されることが必要なのである。

では、愛着の問題はどうしたら解決できるのか。

子どもに対するアプローチとして、この著作の後半では詳しく実践方法が解説されているが、特に重要と思われたのは下記の点である。

「それに対する答えは、一言で言えば、本人の「安全基地」になることだとされる。安全基地とは、本人が困ったときに、いつでみ身を寄せることができ、それが本人の支えとなって、前向きな活動を促すようなものである。」(240頁)

身近な子どもが問題を抱えている場合は、その子にとって安全基地になってあげること。自分の子どもが(そして自分自身が)問題を抱えている場合は、まずは自分が誰か、安全基地となる人を見つけることが大事なのだろう。

感想

岡田尊司が監修しているということもあり、やはり子どもの問題は愛着の問題にある、というのがこの本の最も重要な主張となっていた。多くの現場を経験した専門家は、同じ答えに行き着くのかもしれない。

ここであげられているほどの重いケースは、専門家が解決しなければならないのだろう。

しかし、これと同様の愛着の問題は、多くの家庭で起こっていると思われる。

そのような家庭の場合、親からすれば「自分で自分の愛着の問題を解決しなければならない」という難しさがある。親が問題を抱えた子どもなら、親に頼らずに愛着の問題と向き合わなければならない。

誰でも、適切な第三者の力を借りて解決していくというわけにはいかないだろう。

しかし、このような本を読んで自分のことをよく振り返り、まずは自分の愛着の問題を受け止める、というのが第一歩なのだろうと思った。

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