コーチング

「質問思考(Q思考)」を身につけて本当に大事なことを見付ける方法

2019年2月2日

Q思考から学ぶ質問思考

あなたは「質問思考」を知っていますか?

人間の脳の機能は「問いかけ的認識」であることはこれまでの記事にも書いたことがありますが、『Q思考ーシンプルな問いで本質をつかむ思考法』というこの本に書かれていたことは「問いかけ的認識」を、より意識的に使うための手法であると思いました。

〇〇思考法という本はたくさん出ていますが、人が持つもっとも本質的なアタマの働かせ方である「問いかけ」を深めるという点で、とてもシンプルで実践しやすく、非常に効果が高い思考法だと思います。

なぜ実践しやすいのかというと、新しく思考法を身につけるのではなく、誰もが常に無意識に行っている「自分への問いかけ」を、より意識的に行うだけだからです。

『Q思考』で書かれていた内容は、以前に書いた以下の記事とも共通するものです。

この本を読んで、私は自分のアタマの使い方をより良く変化させられる可能性を感じましたし、コーチングを行う上での「問い」の使い方も、もっと高められるように思いました。

『Q思考』から学んだことを詳しく書きました。

「質問」の大事さは忘れられている

まず、著者は「質問すること」はとても大事なのに、質問することは意識的に訓練されることはなく、忘れられていると言います。

質問が忘れられているのは、以下の理由からなのだそう。

  • 質問することは当たり前すぎるため
  • 優秀な人は行動することを優先させ、現状を疑わないため
  • 社内の秩序維持のため(問題を指摘すると円滑に業務が遂行されない、余計なリソースが必要になる)
  • 責任逃れのため(問題を指摘すると、対処まで負わなければならなくなる)
  • 質問することは脳に負荷がかかるため

確かに、質問するということは、一度立ち止まって現状を疑うことですので、面倒な上にスピードが落ちることですよね。

忙しく生活しているほど、質問することからは遠ざかってしまいます。

著者は、質問せずに行動することもこれまでの時代では評価されていたが、現代では質問することの価値が高まっていると言います。

現代社会における質問の役割

なぜ現代、質問の役割が高まっているのか。

その理由の1つは、時代の変化が速く、人は人生の中で複数の分野を習得しなければならなくなるからです。これを著者は「連続習得」と言います。

変化の速い時代に新しいことを学ぶ場合、学びの対象はすでに体系化されているとは限りません。そのため、自ら問い、実践しながら学ばなければ、習得することができません。

したがって、個人レベルで「質問すること」が大事なのです。

さらに、それだけではありません。

AIの実用化が進み、AIがあらゆる「答え」を教えてくれる時代でも「質問」は教えてもらえないと著者は言います。

そこで、ビジネスの世界でも質問の価値が高まっているというのが著者の主張ですが、質問はただ問えば良いというわけではありません。

より質の高い質問を生み出す必要があります。

ビジネスの世界でも、これまでは、

  • もっと速く生産するためには?
  • もっと効率良くするためには?
  • もっと安くするためには?

といった質問が中心でしたが、すでに上記のような質問は時代遅れであり、これからは「なぜ?」「もし〜だったら?」という、より本質を問うような質問が大事になっていくのです。

いかに質問し続けるか?

ここまでお伝えしたような理由から、誰もが意識的に質問するようにしていくべきなのですが、いつでもネットで「答え」を得られる時代ですから、自分で「質問」を持ち続けること難しいです。

では、どうしたら質問を持ち続けることができるのか?

その方法について、著者は以下のような方法を提示しています。

  • なぜ?→もし〜だったら?→どうすれば?と問う
  • レッテルを貼らない
  • 会社に質問文化を根付かせる
  • 早く結果を求めず問い続ける

といった方法を紹介しています。順番に解説します。

なぜ?→もし〜だったら?→どうすれば?と問う

著者が『Q思考』の中でもっとも大事な思考法として紹介しているのが「なぜ→もし〜だったら?→どうすれば?」と問うという思考法です。

  1. なぜ?→現実の問題点を見る
  2. もし〜だったら?→視点を変えて想像する
  3. どうすれば?→実行する具体的な方法を考える

まず「なぜ?」という問いで、目の前の課題を明瞭に認識することからはじめます。

次に「もし〜だったら」という問いで、さまざまな未来を描き、じっくり考えます。すぐには答えを出さずに、もし〜だったらどうなるか?と何度も考えて試し、検証し続けるのです。

最後に「どうしたら?」というより現実的な問いを使って、思い描いた方法を実現させていきます。

Why→If→Howを何度も行き来することで、描いた理想を現実的な方法で解決していくことができるのが、この質問法です。

レッテルを貼らない

著者によると、大人ほど物事にレッテルを貼っているそうです。

しかし、レッテルを貼ると、その対象が「知っているもの」になってしまうため、それ以上の質問を放棄してしまいます。

したがって、大人になってからも、自分が無意識にレッテル貼りをしていないか?レッテルを貼っていた対象を問い直すとしたら、どのような質問ができるか?と考えて見ることが大事なのだそうです。

会社に質問文化を根付かせる

個人レベルではなく会社レベルでも、質問し続けることが大事です。なぜなら、先ほども説明したように、ビジネスの世界でもより質の高い質問を創り出すことが大事になっているからです。

しかし、個人レベルで意識することと、会社に文化として質問することを根付かせることは、難易度が異なります。そこで著者は、以下のような方法を提案しています。

  • 質問を奨励する
    質問すると得するような制度を作る
  • 会社のミッションステートメントを質問にする
    理念を「〇〇するにはどうしたら良いか?」のように変える
  • 業務から離れられる制度を作る
    Googleは勤務時間の20%を自分の好きなことに当てられる制度を作っている

より詳しい方法は、『Q思考』を読んでみてください。

早く答え・結果を求めず問い続ける

質問し続けることについて、より実践的な方法として「早く答え・結果を求めずに問い続ける」ということが、この本の中では繰り返し説かれています。

質問をするためには、

  • 一歩後ろに下がること
  • 他の人が何を見失っているのかに気をつけること
  • 前提条件を疑うこと
  • 前後関係をよく見極めながら、足下の条件や問題の理解を深める
  • 今抱いている疑問を疑う
  • 特定の疑問や質問については自分が主導権を握る

などの方法が紹介されています。詳しくは本を読んで欲しいのですが、いくつかためになったことを紹介します。

■一歩後ろに下がること

現代人は忙しいため、ゆっくりと問い、考えることから逃げていると言います。なぜなら、質問することを、

  • 非生産的だ
  • 問うべきタイミングは今じゃない
  • 正しい問いは難しい
  • 良い問いが見つからないことが不安

などと考えているからだそうです。

しかし、しっかり質問して考えることの意義はこれまで解説した通り、非常に大事なことです。

そこで、忙しさから離れることが大事で、そのためには何かを中断して時間を作る必要性があります。

忙しさから離れる具体的な方法として、自分だけの「亀の囲い池」を作ることを提案しています。つまり日常から離れ、生活や仕事上の問題を考えず、本質的な問い(なぜ?もし〜だったら?)だけを考える場所・時間を作るということです。

ネットを一日遮断するというのも一つの方法です。

■答えは探せば見つかるものと思わない

私たちにありがちな思い込みとして「答えは探せば出てくるもの」というものがあります。

しかし、より本質的な質問をする上で大事なのは、すぐに答えを出さずにいつまでも問い続けることです。

答えが見つからないことはストレスになり気持ち悪いですが、その状態に慣れることが、より本質的な問いを立てていく上で大事なことなのだそうです。

質問し続けることで、より大きくて力強い質問を創り出すことができ、より本質的な課題や解決方法を導き出すことができるのです。

『Q思考』の中ではもっとたくさんの具体的な質問の方法が紹介されていますし、実際のビジネスの現場で超一流の企業がどんな質問をもって行動しているのか、詳しく解説されています。

ぜひ一度手に取って読んでみてくださいね。

まとめ:リサーチクエスチョンという質問思考

私がこれまでに「問い」を意識的に持つようになったきっかけがいくつかあります。

1つは学部生の時に入っていた研究会です。

京大のOBの方達が数人でやっていた研究会だったのですが、メンバーみんながそれぞれ、自分の分野に関する本質的な問いを持っていて、常に考え続けるようにしていました。

圧倒的な頭の良さの理由の1つは、この思考習慣にあるのかと納得した覚えがあります。

もう1つのきっかけが、九大での大学院生活です。

大学院では自分の研究テーマについての「リサーチクエスチョン」を持つように指導されました。リサーチクエスチョンとは、研究テーマで明らかにしたいことを質問にしたものです。

また、副査の准教授の先生からは、研究者になるならリサーチクエスチョンだけでなく、研究人生全体で解き明かしたい「問い」を持つことも大事だと言われました。

たとえば「国家とは何か?」「政治とは何か?」のような、抽象的、本質的な問いを持つということです。

アカデミックの世界ではこれほど「問い」を持つことが根付いているのに、その他の世界で根付いていない、意識されていないのはもったいないことだと思いました。

『Q思考』を読んで、私自身あらためて、でもっと意識的に「問い」を持つようにしていこうと思います。

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