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「文明の身体」から「野生の身体」へー身体は社会的に創られるー

2023年8月4日

文明の身体から野生の身体へ 身体は社会的に創られる

こんにちは、ふかや均整院の院長深谷です。

今日の記事のタイトルはちょっと変わっていると思われるかもしれませんが、私が武術や整体の施術を通じた勉強、経験から得た内容です。

そもそも、人間の身体は社会的に創られる、というのが私が持っている根本的な考え方の一つです。

「身体が創られるってどういうこと?」「社会的に創られるってどういう意味?」という疑問が出てきて当然だと思います。

端的にいえば、人間の身体は環境に適応できるように、多様な働きができるような構造へと進化してきたため、どのような環境で育ったか、どのような環境で生活しているか、ということによって大きく変わってしまう、ということです。

多くの現代人が悩まされている「腰痛」「肩こり」といった不定愁訴や「体の歪み」「思うように動かない」といった体に関するあらゆる問題は、人間が進化で獲得した構造と、現代の文明的な生活とのギャップにあると考えています。

そのため、不調・痛み・こり・疲労が出にくい「いい体」になるヒントも、また「身体は社会的に創られる」という原理原則から導き出すこともできると思います。

この記事では、私のこの考え方について大枠を解説しています。

身体は社会的に創られるもの

まず「身体は社会的に創られる」という意味から説明します。

人間は認識によって統括されている

そもそも、人間の身体はその他の動物とは大きく異なるものです。一番の違いは、動物は本能によって統括されているのに対して、人間は認識によって統括されているということです。

認識とは人間の頭脳の働きのことであり、認識論という学問分野では、頭脳の働きはすべて認識という頭の中に描かれた映像によるものであると考えます。動物も頭の中に五感覚器官の反映をもとに映像(認識)を描きますが、動物の場合は、この映像が本能によって統括されます。

つまり、犬なら犬らしく、ライオンならライオンらしく外界を見て取り、行動するということです。

一方、人間の場合は個性的に外界を反映し、個性的な映像を描き行動します。つまりAさんとBさん、Cさんでそれぞれ全く違うように外界を見て取り、まったく違う行動をします。

認識論について詳しく知りたい場合は、下記の本などをご参照ください。

端的にいえば、人間は動物のように決まったプログラムで考え、行動するのではない。生まれや育ちによっていかようにも考え、行動するようになるということです。

身体は生まれ育った環境によって創られる

人間の頭脳の働きが本能的ではなく、認識的である、つまり生まれや育ちによってどのような頭脳活動にもなりえるということは、行動もそれだけ個性的になるということです。

人間の頭脳の働きは本質的に個性的であり、ほうっておけばまともな社会生活はできません。動物は勝手に群れをつくって生きていきますが、人間は普通の社会生活ができるように教育されなければ、普通の社会生活ができるようになりません。

そのため、頭脳の働きは社会によって、社会になじむ形で発達するように育てられてきました。これがしつけであり、教育です。

また、頭脳の活動がそれだけ個性的であるということは、身体活動も個性的です。認識に描かれたことを現実の世界で対象化(現実のものにする)には、身体を用いるしかありません。そのため、個性的な頭脳によって働かされる身体は、それだけ個性的に働きます。

したがって、身体活動は生まれ育った環境(時代、社会、階級、経済力、文化、治安、テクノロジーのレベルなどなど)によってどのようにも変わります。

日本人であれば「椅子に座らず床に座る」「靴を履かない」「肉体労働が多い(人口として多かった農民の場合は特に)」というような生活をしていました。また、身体を作る食事は、国内で採れる動植物によって作られ四季によって変動する日本食でした。

それが、現代では激変しています。長年続いた日本人の生活は欧米的に変化し、さらにテクノロジーの発展と生活への浸透によって、世界のどこの国の人も大体同じような生活をするようになりました。

そのため、身体活動の在り方も激変し、まともな運動をしなくなってきた、ということはこれまでもこのサイトのブログの中で書いてきたことです。

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身体は使われ方によって創られる

ここでようやくタイトルの「文明の身体」という表現が説明できます。

文明の身体とは、現代人的なあまり身体を使わない、運動しない、テクノロジー依存の生活に慣れたライフスタイルによって創られた身体のことです。

人間の身体は環境に適応した形で育ち、使われ、創られていきます。そのため、現代人的な生活をしていれば、必然的に現代の文明のレベルに規定された、現代人的な身体になります。

身体は「使われる面」と「創られる面」に分けてとらえなければなりません。

身体は、まずその時代、社会、文化といった環境に合わせたレベルで使われます。現代人の生活であれば、靴を履いて歩くとか、椅子に座り続ける、仕事でPCを使い続ける、といった形で使われることになります。

この使われ方が一定量を超えて繰り返されると、それが身体に変化を及ぼします。これが機能による身体の歪みであり、たとえば「猫背」「反り腰」「巻き肩」などと言われるものです。

さらに、これが長期間続いて矯正されることがなければ、器質的な変化を生み、不可逆になってしまいます。これが関節の変形などに伴うさまざまな整形外科的な疾患で、こうなると病院では「手術しかない」などと言われるようです。

つまり、身体は使われ方の中身によって、どのようにも創られるということです。

このようにした創られた現代人の身体の在り方が文明の身体ですが、この身体の在り方に問題があるのは、それが進化の過程で獲得した人体の構造と矛盾する部分があるからです。

この点について、下記の記事に書いています。

【体が歪むのはなぜ?】生活全般にある原因と具体的な4つの対処法

端的に説明します。人体は数億年の生物の進化の歴史、数十万年のヒトの進化の歴史の中で長い間をかけて環境に適応しながらつくられてきました。一方、現代人のような文明的な生活はせいぜい近代化が進んだ百数十年の歴史しかなく、その環境に人体は適応していないということです。

確かに、人間はどのような環境にも適応できるように、他の動物とは異なる進化をしてきました。

しかしそれでも、現代人の生活では進化で獲得した人体の構造と矛盾する部分が多いのです。そのため、さまざまな不調を持つ方が増えています。

医療技術の発展によって、重大な病気は治りやすくなりました。しかし、病気というほどではない「なんか疲れやすい」「コリがしんどい」といった日常的な不調はむしろ増えているのではないでしょうか。

「野生の身体」を目指そう

私は、このように現代的なライフスタイルで創られた不調になりやすい身体を「文明の身体」とここでは書いています。

これに対して「野生の身体」を目指そうというのが私のコンセプトです。

「野生の身体」は「文明の身体」の逆と考えていただければOKです。

ヒトが数十万年の歴史の中で獲得した構造・機能をしっかり使いこなせる身体を創ること、それを維持することを目指しましょう、ということです。

繰り返しになりますが、人類の身体は多様に、複雑に活動できるように進化してきました。しかし、現代人の生活はその機能の一部しか使いません。また、そもそも動物は激しい運動ができるように進化してきて、ヒトの祖先はさらに地上から樹上へと三次元の運動を行うようになりました。

その激しい、立体的な運動を続ける中で創られてきた構造を、人類も引き継いでいるのだと思います。

そのため、人間の身体はたくさん動かして、運動してこそしっかり働くものであり、現代人的な動かない生活は、それだけで病的であるといえます。

「じゃあ筋トレやランニングをたくさんすればいいのか」と思われるかもしれません。もちろんやらないよりはいいですが、筋トレやランニングで使われる身体の機能も部分的です。そのため、特定の筋トレ、スポーツなどを行うよりも、いろいろな運動・スポーツを行った方がよりよいでしょう。

私個人としては、古武道を中心に運動をしてきたため、やはり偏りがあると考えています。

そのため、偏りを補うためにアニマルフローや胴体力、そのほかさまざまなエクササイズを取り入れて自主トレのメニューを作っています。

このように多様な動きを日常的に行うことは、普通の方においては不調になりにくく、一生動ける身体になっていくことができるというメリットがあります。また、スポーツ・武道など運動をしている人であれば、怪我を減らす、加齢による衰えを減らす、といったメリットもあると思います。

今回は具体的なトレーニングは紹介しませんが、一部のエクササイズはInstagramで紹介しています。

こちらもぜひご覧ください。

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