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整体施術でも武術でも重要なのは「相手に情報量を与えない」触り方=相手を緊張させない触り方

2023年7月4日

相手を緊張させない触り方

整体の施術と武術の共通点については、以前も書いたことがあります。

施術の技にはさまざまなものがありますが、私はその中でも「触り方」「自分の体の精密な操作」という点に着目し、深める方法を検討しています。

そこでこの記事では「触り方」「自分の体の精密な操作」について、どちらも「相手に情報を与えないこと」が一つの目的になっている、ということについて考えたことを書いています。

1章:施術、武術に共通して必要なのが相手を緊張させないこと

整体の施術の目的の1つは、相手をゆるませる(緊張を解きほぐす)ことであると考えています。

整体の施術を受けに来る方は、まず何らかの体の不調を抱えているわけですが、その体の不調はさまざまな体の使い方の歪み、姿勢の歪み、体の内面の不調などからきていると考えられます。

その「歪み」は筋肉の緊張の不均衡や骨格のバランスが崩れていることなどから起こるものです。

そのため「歪み」の原因となっている緊張を解きほぐし、身体のバランスを整えることが、整体の施術の目的の1つであるといえます。

しかし、整体に来るお客様と整体師は通常他人同士であり、お客様な普通は緊張して来院されるものです。見ず知らずの他人に体を触られるのですから、緊張するのは当然です。

見ず知らずの他人から触れられた際に体が緊張するというのは、危機に対応する動物としての本能であるといえるでしょう。

そのため、整体の施術には「触れることで解きほぐしたいのに、触れると緊張してしまう」という矛盾があるといえます。そのため、この矛盾を解決する「リラックスさせる触り方」を深めることが、施術において大事であると私は考えています。

では、リラックスさせる触り方とはどういうものなのでしょうか?

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2章:相手に情報を与えない=相手を緊張させない

リラックスさせる触り方とは、相手に情報を与えない触り方である、というのが私の現在の考えです。

そもそも、触れるということは、接触面から相手にさまざまな情報を与えてしまうものです。

たとえば、指先に力を入れてギュッと握ると、相手は嫌な感じがします。「掴まれた!」という実感を強く持つでしょう。

また、手のひらの圧が不均衡、掴んでから加速的に動かす、速すぎる速さで動かす、触ったときに手のひらが相手にぶつかる感じがする、といった触り方も、相手に嫌な感じを抱かせます。これらはつまり、触覚によって相手に情報が伝わりすぎていることだといえます。

逆に、指先に力が入らず接触面全体に均等圧がかかる触り方、ゆっくりとした動かし方、等速度的な動き、相手の体にぶつからない触り方、などであれば、情報量が少なくなります。そのため、相手は余計な緊張をしなくてすみます。

このような触り方のヒントは、武術の世界で得たものです。私が通ったある武術道場では、あらゆる場面で「相手に情報を与えない」ことが重視されていました。武術であれば、目の動き、体の動き、ちょっとしたしぐさ、表情、そして相手との接触面などにおいて、一瞬の間に情報がやり取りされます。

たとえば、相手との接触面において力みが伝われば「投げようとしている」「逃げようとしている」などの動きをすることが予測されてしまいます。そのため、相手に情報を与えないことが大事なのです。

逆に、情報量が少なければ、相手に判断材料を与えず、こちらが有利な状況に身を置くことができます。特に柔術、合気系の武術では、接触面から情報を与えないことが重視されており、情報が少ないと相手の動きに対応することができず「知らない間に投げられていた」といった達人技も可能になるのだと思います。

このような一見不思議な達人技は、接触面から得られる情報が極めて少ないために、反応することができない動きであると考えています。

私も実際にかけられたことがありますが、本当にまったく反応する隙がないものです。

このように、施術でも武術でも、接触面から情報を与えない触り方をすることで、相手を緊張させないことが重視されているのです。

3章:緊張させない触れ方のトレーニング方法

緊張させない触れ方について、現在、私が考えるトレーニング方法は下記です。

①接触面の圧を均等にする

②体の動きを接触面に伝えない

③等速度で動かす

④二点を持つ場合は、両手の動きを均衡させる

⑤自分の体を大きく動かすことで、受者の体の動きを最小にする

⑥接触面から相手の体をよく感じ、触覚によって情報を得る

⑦接触面から遠く離れた関節、筋肉を使って動く

⑧自分の体から余計な力みを抜ききる(ただ脱力するのではない)

⑨接触面よりさらに奥を触るように手を使う

⑩自分の体から生じる力の向きをできる限り一致させる(力の集中)

ここでは簡単にしか触れませんが、この技術の多くは剣術をはじめとする武術の実践の中から得たものであり、また一部はベテラン先生からのアドバイスを元に考えを進めたものです。

また、身体均整法には「角度・張力・間」が大事であるという教えがありますが、これはそのまま武術にもいえることであり、この要素を深めることはやはり非常に重要でしょう。

これらの実践によって、施術技も武技もレベルアップしていければと思います。

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