自己理解・分析

山田ズーニー『おとなの進路教室。』の要約・感想

2021年1月18日

会社員であっても転職することが普通のことになり、「これからどう働いていくか」ということを、常に考え続けなければならない社会になった。いや、昔からそうだったのかもしれないが、社会の変化が速くなり、自分の進路を考えるということに、より意識的にならなければならなくなったのだと思う。

私はフリーランスだが、それゆえに働き方について考えることが非常に多い。

よくあるビジネス書では、自分の強み、やりたいこと、お金になること、この3つの要素が重なるところで仕事を探そう、などと書かれている。しかし、このような抽象的な、図式的な考え方で、本当に自分に合った仕事が見つかるのか、自分にとっては疑問があった。

そんな中、編集、執筆に関する仕事を長く続けてきた、山田ズーニーさんの『おとなの進路教室。』を読み、とても良いことが書かれていると思った。

『おとなの進路教室。』の内容

山田ズーニーさんのことは、小論文の書き方などの著作で知っていたため、たまたま見つけたこの本も読んでみた。

著者がそれぞれの体験からどういうことを考えたか?ということがありのまま書かれているため、体系的ではないし、読んですぐ役に立つようなノウハウ本とも異なる。しかし、著者の体験と思考を追体験することで、多くの人が自分事として置き換えて、自分の「進路」を考えるのに役立つと思う。

簡単にまとめられる内容でもないが、私なりの捉え方としては、下記のようになる。

  • やりたいことは他者との繋がりから見つけていくしかない(頭の中で考えていても見つからない)。
  • 他者と繋がるために、自分のことをさまざまな形で表現し、リアル、ネットに関係なく発信し続けていくこと。
  • 他者に表現し、その反応を受け取り、また表現する、その繰り返しでやりたいことが分かってくる。
  • 「なんだかわけがわからないけど、面白い」ということに飛び込んでいく。そのために自分を外に開いておく。

まとめてしまうと内容が伝わらないかもしれない。この本の価値は、一人ひとりが自分のこととして置き換えて読むことであらわれてくるものだと思う。

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これからやりたい仕事について

これからどういう仕事をしていくか、不確定な未来を考えるのはなかなか大変なこと。著者は、下記のように整理する。

  • やりたいこと(want)=未来:失敗して当然のこと
  • できること(can)=過去:自然に伸びていくもの
  • やるべきこと(must)=現在:必然的なもの

新しい仕事をしようとすると失敗ばかりだったりするが、それはwant・未来への挑戦なのであるから、失敗して当然。いずれcanになっていく。しかしcanだけやっていると、希望を失ってしまう。仕事は、つい今できること、得意なことを軸に考えてしまうが、挑戦してwantをcanにしていく、という姿勢は希望が持てる。

しかし、これではまだ抽象的である。

具体的には、どうやってこれから「やりたいこと」を見つけて行けば良いのか?やりたいことがあっても、それがあまりにも壮大で遠いものだったり、空想的なものでは挑戦しにくいし、そういう壮大なものは、たいてい何らかの劣等感から生まれていたりする。

著者は、まず、スケジュールに余白を作ることで、自分の心が自然に向くことを見つけるようにしたという。

「自分が面白い!やりたい!と思った直感を手放してはいけない」

表現すること

そして、そうして見つかったやりたいことを仕事にするためには、他者との繋がりの中から見つけて行くしかないという。

「人とつながりたいなら、自分の中にあるものを出して、表現するしかない。自分の中にある、感情、想い、考えを言葉なり、行動なり、生き方なり、何らかの手段で、カタチにして、人に見せる必要がある。」

こうして人に見せ、反応を得ることで、自分が表現したものと、人が求めてくれるものが繋がっていく。

「”外”と関わって、自分を表現し、またその反応を受けて進んでいく果てに、自分の表現したことへの理解者は生まれて、通じ合う可能性も生まれてきます。そして通じ合ったとき、人との間に生まれた絆こそが、他の人とは取り替えのきかない自分の居場所になるんだと思います。」

「皮肉なことに、他者に目を向けなければ、自分は見えてこない。自分が見えないから知りたくて、よけい関心は自分へ、内へ内へと向いてしまう。」

どんな自分が表現するのか

では、面白い!と思ったことを他者に表現していくとき、どのようにしたらいいのだろう。著者は、面白いと思ったこと、好きだと思ったことについて、粘り強く自分の言葉で表現していくことが大事だという。

そのためには、まず「どんな自分」が表現しているのか、ということから明確にしていかなければならない。どんな人間がこのアウトプットを作っているのか?どういう問題意識なのか?ということを表現しなければならないという。

外から仕入れた誰かの作った知識ではなく、自分の純粋な想い、問題意識に立脚して表現すること。それが何よりも大事なのだという。

フリーランスとしては、特に下記の点に共感した。

「個人で、つくり手として、やっていこうというときに、お金よりもモチベーションを失うことの方がずっと恐い。モチベーションがあれば、また、自分で何かつくって、なんとでもやっていける。」

「さらに、個人で仕事をやっていくには、いやでも狭くなる自分の世界をどう広げていくかが問題だ。」

この本は、これからの働き方を考える上で、多くの気付きを与えてくれた。

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