「筋トレで介護の腰痛を予防できるのかな?」
「腰痛を予防できる筋トレを知りたい」
この記事は、このような悩みを持つ方に向けて書いています。
結論から言えば、介護での腰痛は筋トレで予防可能です。
ただし、筋トレさえすればいいわけではありませんし、筋トレはポイントを押さえてやらなければ逆効果になることすらあります。
そこでこの記事では、
- 介護の腰痛予防に筋トレの効果が高い理由
- 具体的な6つの筋トレの方法
- 腰痛にならないための筋トレ以外のポイント
などについて解説します。
できることから試してみてください。
1章:介護での腰痛予防に筋トレの効果が高い
それでは、まずは介護の腰痛予防に筋トレの効果が高い理由と、効果が高くなる筋トレとはどういうものか説明します。
具体的な方法から知りたい場合は、2章をお読みください。
1-1:介護で腰痛になりやすい理由
そもそも、介護で腰痛になりやすいのは、
- 利用者さんの体など、重い重量を持ち上げる重労働が多い
- いろいろな姿勢、状況で体を使う必要がある
- 人手不足で疲労を溜めやすい
- 多くの人が正しい体の使い方を知らない
といった理由があります。
利用者さんの介護に伴う重労働は、もちろん介護による腰痛の原因の一つではあります。
しかし重労働であっても正しい身体の使い方や疲労回復の方法を知っていれば、腰痛を予防することは可能です。
そのため介護で腰痛になりやすいのは、正しい知識や方法を身につけてないからであると言えます。
介護を補助するための様々な道具は開発されていますが、施設の事情で導入できなかったり、様々な場面で使うには使い勝手が悪い場合もあると思います。
さらに介護業界の人手不足はそう簡単に解消されないと思われますので、何よりもまずは自分の身体を正しく使えるようにすることが腰痛予防に大事なのです。
介護の腰痛予防に筋トレの効果が高いのは、筋トレを通じて正しい身体の使い方を学ぶことができるためです。
逆に言えば、ただ一般的な筋トレをすれば良いというわけではなく、正しい身体の使い方を身に付けられるような方法で行うことが大事だということです。
1-2:腰痛予防に効果が高い筋トレとは
介護による腰痛予防に効果が高い筋トレとは、下記のようなポイントを押さえたものです。
1-2-1:身体の構造を正しく使えるようになること
まず何よりも、腰痛予防のためには体の構造を正しく使えるようになることが大事です。
人間の体は、正しい姿勢であれば重い重量でも無理なく扱えるような構造になっています。しかし、多くの方はこれまでの生活の中で動きのクセや姿勢の歪みを身につけてしまっています。そのため、そのような体のまま負荷の高い動きをしてしまうと、特定の部位に負荷が集中し怪我をしてしまったりするのです。
特に、腰は身体の負担が一点集中しやすい構造になっているため、間違った動きや姿勢の影響を受けやすいのです。
したがって、筋トレによって体の構造を正しく使えるように動きを覚え、かつ正しい姿勢をキープするために必要な筋力を鍛えることが重要なのです。
1-2-2:無駄な力みをなくして動けること
介護で腰痛を予防するためには、普段から無駄な力みをなくして動けるようになることも大事です。
重労働をする時は、どうしても全身に力が入ってしまいます。もちろん重労働する時には強い筋力を発揮しなければなりませんが、無駄な力み・緊張があるとかえってパワーが出なくなるのです。
なぜなら、力みがあると体の構造を正しく使うことができないためです。
そのため、筋トレによって筋力をつけるだけでなく、力みをなくして最小限の筋力の発揮でパワーを出すような体の使い方を覚えることも大事です。
1-2-3:適切な部位の筋肉が使えること
介護による腰痛予防のためには、筋トレによって適切な部位の筋肉を使えるようになることも大事です。
腰痛になりやすい人は、たとえば重いものを持ち上げる時に、下記のような動きをしてしまいがちです。
- しゃがみこまずに腰・背中を丸めて持ち上げようとする
- しゃがみこんでいても、力を入れた時に腰を強く反ってしまう
このような身体の使い方は、腰痛の原因になります。
そもそもしゃがみこまずに重いものを持ち上げようとすると、腰に強い負担がかかりぎっくり腰などの原因になりますので、このような動き方は論外です。
そして、しゃがみこんでいても力を入れる時に腰を強く反ってしまうのも、腰痛の原因になりますので注意が必要です。
重いものを持ち上げる時は、しっかりしゃがみこむだけでなく、体幹を筒のようにして張りのある状態にして安定させ、特に股関節の力を使って持ち上げると身体を傷めにくいです。
詳しい方法は後ほど解説しますが、筋トレによってこのような正しい体の使い方を身に付けることができます。
1-2-4:疲労回復力の高い身体をつくっていけること
筋トレは筋繊維を一度破壊し、それを回復させることで筋肉を成長させるものです。そのため日常的に行っていると回復力を向上させることができます。
また、筋肉の使っていない部位は血行が滞り老廃物が溜まり、コリや疲労感の原因になります。筋トレによって、普段使っていない部位の血行を向上させると、普段から感じているコリや疲労感も解消していくことができます。
疲労がたまると腰に来てそれが腰痛の原因になっていくという方も多いため、普段から疲労を回復することは腰痛予防にもとても大事なのです。
このように筋トレには疲労回復の面でもメリットがあるのです。
2章:介護での腰痛を予防する6つの筋トレの解説
それではこれから、介護での腰痛を予防するための筋トレを6つ紹介します。
どれもやり方にポイントがあるため、ポイントを押さえて行うことが大事です。
- ハムストリングスのトレーニング
- スクワット
- お腹のインナーマッスル強化①背骨全体を使う腹筋
- お腹のインナーマッスル強化➁レッグレイズ
- プランク
- プッシュアップ
順番に説明していきますので、できそうなものからやってみてください。
2-1:ハムストリングスのトレーニング
腰痛予防のためには、腰の部分の背骨(腰椎)を動かさず、体幹を安定させたまま動くことが大事です。
そのためには、背骨を「丸める・反る」「ねじる」といった使い方をせずに、その代わりに股関節を使って体幹を前屈・後屈させる、体幹をひねる、という動きをすることが大事です。
そのために、まずやるべきなのがこのトレーニングです。
このハムストリングスのトレーニングは、簡単に言えば「お辞儀」をすることです。
①足を揃えてまっすぐ立ちます。
➁股関節に前から指を当てます。
③当てた指を挟むようにして、股関節から90 度までお辞儀します。
④お辞儀したら、また股関節だけを使って、まっすぐの位置まで体を起こします。
このトレーニングのポイントは、股関節だけを使ってお辞儀するということです。股関節を軸にして、体幹はまっすぐしたままリラックスさせてください。
また、お尻側にある股関節の裏側の部分を、しっかりと後ろに突き出すように意識してみてください。
このポイントを押さえてお辞儀するだけで、ハムストリングスとお腹の奥の筋肉のトレーニングになります。
多くの方はお辞儀の動きをする時に背骨の動きを使ってしまっています。
そのためお辞儀をした時に、 腰が丸まっていたり反っていたりしています 。このような動きになってしまうのは、太ももの裏の筋肉が硬い、お腹の奥の筋肉が使えていない、という理由からです。
このお辞儀のトレーニングは、お腹の奥の筋肉を使えるようにし、太ももの裏の筋肉を緩めることを目的にしています。
この二つの筋肉と股関節の使い方は、介護の腰痛予防のために非常に重要なものです。そのため、 まずはこのトレーニングをしてこの二つの筋肉と股関節の使い方をしっかりと身につけてください。
2-2:お腹のインナーマッスル強化①背骨全体を使う腹筋
腰痛予防には、体幹、特に腰の部分の背骨(腰椎)を安定させることが何よりも大事です。
そのためには、背骨(腰椎)に負担をかけるのではなく、お腹全体の筋肉を使って負担を体幹全体で支えることが必要です。
そのために必要なのが、下記のポイントです。
- 腰に負担がかかったときに腰を反ったり丸めたりせず、背骨をまっすぐにしたままキープできること
- 背骨をまっすぐにしてキープするために、お腹の奥の筋肉をしっかり使えること
この2つのポイントを守って動けるように筋トレによって癖をつけることが大事です。
そのために行うのが、この背骨全体を使う腹筋です。
① 体育座りの格好で座る。
この時、手で足を持って体を支えてもいいが、可能であればお腹の下の方に力を入れて手を離した状態でお腹を太ももにくっつけるようにし、体が倒れないように保つ。
➁ 両手をまっすぐ、「前にならえ」のように前に伸ばす。
この時姿勢は変えず背骨をまっすぐのままにする。
③ 「前にならえ」から、腰の一番下の背骨から順番に丸めていくようにして、ゆっくり背中全体を地面につけていく。完全に仰向けになっても手は前にならえの状態のまま。
④今度は背中の一番上にある背骨から順番に丸めるようにして、最初の姿勢に戻る。体を起こす時に、腰が反ってしまう場合は腰痛になりやすい癖が付いているため 、最後まで腰が地面から離れないように、お腹の下の方に力を入れて背骨を若干丸める意識をする。
この筋トレで、最も重要なのが④です。
この動作をする時に、多くの方は腰が反ってしまうため、背骨に負担がかかってしまいます。この時に背骨が反らないように下っ腹に力を入れ続けるのが一番大事なところです。
この時の力の入れ方が、腰椎を安定させる最大のポイントになります。
2-3:お腹のインナーマッスル強化➁レッグレイズ
前述のように、介護で腰痛を予防するためには、腰椎に負担がかからないようにお腹全体を使って体幹を安定させることが大事です。
そのためには、腰椎が動かないように体幹を安定させたまま動く癖を、いろいろな筋トレを通じて身につけることが大事です。
そこで次に、レッグレイズという筋トレを紹介します。
これは、仰向けで脚を上げるというよくある筋トレの1つですが、これも下記のポイントにそって行うことで介護の腰痛予防に役立ちます。
①仰向けになり、脚をまっすぐ伸ばす
➁腰と地面の間の隙間を少し潰し、地面に腰がほぼくっつくようにする。この時、下腹部に力が入る感じがあるといい。
③腰を地面につけたまま、膝を伸ばして脚を地面から45°くらいの高さまで上げる。
④上げたら、同じ姿勢をキープしたまま ゆっくりと脚を地面に下ろす。
これを、 10回程度続けてください。余裕があれば2セットから3セット行なってください 。
腰を反らせずにレッグレイズができるようになったら、もう一点意識してほしいポイントがあります。それは股関節をお腹の方に引き込むような感覚です。
この感覚があると、 お腹のインナーマッスルを効率よく使うことができ、より腰に負担のない体幹の安定を身に付けることができます。
2-4:プランク
ここまで説明してきたように、腰痛予防のためにはお腹の筋肉全体で体を支えて、体幹を安定させることが大事です。
そこで、 ここまで説明してきた姿勢をキープしたままプランクを してみましょう。
プランクとは下記のようなトレーニングです。
①肘を曲げて前腕全体が床に着くようにする。身体全体をまっすぐにして、 足はつま先だけが地面についている状態。
➁この状態で体をまっすぐにし、ここまで説明してきたような意識で体幹を安定させる。腰痛予防のためには、腰を反らずに少し丸めるくらいの意識を持った方が良い。
この姿勢をキープしたまま、まずは1分程度を目指してやってみましょう。もし腰が疲れてきたら、腰に余計な力が入っているため、休憩を入れながらやってください。
2-5:スクワット
介護の現場では、しゃがんだ状態や中腰の状態で利用者さんを動かしたり、重いものを移動させたりする機会も多いと思います。
このような動きで腰痛にならないために、スクワットを筋トレに取り入れることも大事です。ただし、これも腰痛予防のために、正しい動き・ポイントを押さえて行うことが大事です。
スクワットのポイントは、下記のものです。
- 体幹を安定させる
- 股関節をしっかり使う
「体幹を安定させる」 というポイントはここまでも説明してきた通りです。 足を曲げて行う動作では、背骨も一緒に丸めたり反ったりしがちです。そのため、スクワットの動きを通じて背骨をまっすぐに保ったまましゃがんだり立ったりできるように筋トレすることが大事です。
さらに、最初の「 お辞儀」のトレーニングでも説明したように、体幹を安定させたまま背骨を動かさずに動くためには、 股関節をしっかり使うことが大事です。
この2つのポイントをおさえて筋トレする具体的な方法は下記の通りです。
①足を広めに開いて真っすぐ立つ。両手は胸の前辺りで肘を曲げ手を組むようにする。
②背骨をまっすぐに伸ばし、お腹の全体に力を入れて体幹を筒のような状態にする。
③この体感が安定した状態をキープしたまま、股関節だけを曲げて腰を落としていく。この時股関節を曲げながら、お尻を後ろに向かって突き出すようにすると、股関節周りの筋肉がしっかりと使われる。
④このまま大腿骨が地面と平行になるくらいの位置まで腰を落とす。この時、膝が自分のつま先よりも前に出ないようにする。また、顔は前を向けたままで、体全体が前傾しすぎないようにする。
⑤この姿勢から、再びゆっくりと元の姿勢まで立ち上がっていく。この時も体幹は筒のようにしたまま、股関節の力だけを使うように意識する。
ここまでが腰痛予防のためのスクワットの流れです。
このスクワットを繰り返した時に、ももの前側が痛くなるようであれば、やり方が間違っています。
お尻の下の方や、太ももの裏側の上の方、股関節の裏側が筋肉痛になる感じだと正しいフォームでできています。
2-6:プッシュアップ
正しい体の使い方をすれば、それほど、大きな筋力を使わなくても大きなパワーを生み出すことは可能です。
とはいえ、介護の現場では、ある程度の腕力も必要とされます。腕力が弱ければ、その弱さをカバーしようとして、別のところに力が入り、その結果、腰痛などの体の不調を起こしてしまう可能性もあります。
そのため、腰痛予防の筋トレとしてプッシュアップつまり、腕立て伏せも行うことをお勧めします。
このプッシュアップも、次のようにポイントをおさえて行うことが大事です。
①地面に両手をついて肘を伸ばし、足はつま先だけが地面につく姿勢になる。
②この姿勢で背骨をまっすぐ伸ばし体全体を筒のようにする。
③この体制のまま脇を閉めるように力を入れ、肘の曲がる方の面ができるだけ前を向くように上腕骨を外旋させる。
④この姿勢のまま以上曲げてゆっくりと腕立て伏せする。できるだけ低く降ろしたら、そこから肘を伸ばして元の姿勢に戻る。
このようにしっかりと最初に姿勢作りをして行うのが、腰痛予防のためのプッシュアップのポイントです。
また、実は、ここで説明したように脇を締めるという力の入れ方がとても大事です。脇を締めることによって、より体幹が安定するだけでなく、腕と体幹のつながりが強くなります。
そのため、重いものを持つ時も、腕だけの力に頼らず、体幹の力を使って持ち上げられるようになるのです。
このように介護で腰痛にならないための筋トレには様々なものがあります。ここで紹介したものは、腰痛予防の筋トレの一部に過ぎませんが、ぜひできるものから取り入れてみてください。
3章:介護での腰痛予防のために知っておくべき筋トレ以外のポイント
介護で腰痛を予防するためには、下記のようなポイントを意識して身体を動かすことが大事です。
これらのポイントを意識せずとも、自然にできるようになれば腰痛になることはずっと減るでしょう。
- 腰を丸めない、反らない
- 重いものを持つときはしゃがむ、身を近づける
- 体幹をひねらない
- 体の中心に使い部分を使う意識
- 背骨を張る意識
これらについて、詳しくは別の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
この記事では、介護での腰痛を予防するための筋トレについて紹介しました。
簡単にまとめると、そもそも介護で腰痛になりやすいのは下記の理由からです。
- 利用者さんの体など、重い重量を持ち上げる重労働が多い
- いろいろな姿勢、状況で体を使う必要がある
- 人手不足で疲労を溜めやすい
- 多くの人が正しい体の使い方を知らない
そして、腰痛を筋トレで予防するには、下記のポイントを押さえて筋トレすることが大事だと解説しました。
- 身体の構造を正しく使えるようになること
- 無駄な力みをなくして動けること
- 適切な部位の筋肉が使えること
- 疲労回復力の高い身体をつくっていけること
そのうえで、具体的な筋トレの方法についても紹介しました。ぜひこの記事を参考にして、腰痛にならないように筋トレを工夫してみてください。
このサイトでは、このような腰痛予防のこと以外にも「体の正しい使い方」「さまざまな不調の原因と対策」「ずっと心身ともに健康に過ごすための方法」などについて詳しく解説していますので、ぜひ他の記事もご覧ください。
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