社会が抱える問題

飯島周『カレル・チャペック』の要約・感想

2020年7月19日

カレル・チャペック

OPELÍK, Jiří. Karel Čapek ve fotografii. Praha: SNK, 1991. pp 157:Wikipedia

飯島周『カレル・チャペック-小さな国の大きな作家-』(平凡社)を読んだ。カレル・チャペック(1890-1938年)はチェコの児童文学作家、詩人、ジャーナリスト、といった仕事をした日本でも有名な作家である。『ロボット』で「ロボット」という言葉を作って広めたことで知られ、生涯を通じて全体主義に対抗した。また、チェコスロヴァキア共和国初代大統領のマサリクとの親交があり、『マサリクとの対話』などを出版。

感想

この著作を読んだのは、ペンの力(作家、ジャーナリストの言論活動や創作による社会への影響)で戦った人に興味があったためである。ハンナ・アーレントも学者でありながらそれを超えて活動した人でもあったが、他にも当時、全体主義に対抗した知識人はたくさんいたはずと漠然と思っており、そんな中Instagramで見かけ、本屋でも平積みされているのを見つけたため、買って読んだ。

カレル・チャペックのあらゆることに興味を持って追求し、また公共的市民としての役割を考え政治家としても活動しようとした姿勢は、現代の日本人も学ぶべきものがある。特に、最近は政治に対する不信からくるものではあると思うが、政府批判する一方で政府に要求ばかりする人々が(特にネット上には)多くいると感じている。これは、国民として当然の要求だとは思うし、この態度を否定することは民主主義の否定や自己責任論の強調に繋がりかねないため、否定はしない。

しかし、被害者意識を持つ人々が増える、自分の人生の責任を取らずに社会に責任を求める、といった傾向を感じており、モラル、倫理観、徳のようなものが失われているように感じている。こうした最近の実感からも、『カレル・チャペック』から感じるものがあった。

また、単にアカデミックな方法(研究)だけでなく、児童文学等の作家としての仕事でも全体主義と戦ったという点に面白さを感じた。

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書き抜き

以下の点は現代でも通じると思う。太字は私。

「政治について」の後半は、チェコ人の「狂信的な国家中心主義」についての痛烈な批判である。すなわち、チェコ人は「お役所が大嫌い」なくせに「お役所があらゆる面倒を見てくれるべきであり、そのために十分な手段を〈お役所が〉持っているという神がかり的な信頼」さえお役所に寄せている。いかなる事故も事件も、自分たちの手で解決すべきものではなく、お役所、つまり政府や警察が責任をもって処理するものと考えている。「民主主義の進展は市民的自治の形でのみ考えられ」るのに、その自治は堕落している。そして「〈国家中心主義と関連する〉中央集権主義と自治の堕落はおそらく連れ立っているらしい」とカレルは考える。小さな町の政治が、国家での論議の二番煎じとなり、首都プラハへの憧れが地方での野心を麻痺させ、具体的な地域での政治を破滅させる。その結果、必要とされる進歩とか生活水準の向上がないがしろにされてしまう。98頁

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