練習・トレーニング

「立甲」できれば身体操作のパフォーマンスが向上する

2019年2月11日

立甲のメカニズムとトレーニング法

あなたは「立甲」をご存知ですか?

「立甲」とは、肩甲骨を立てることです。

通常、肩甲骨は背中にへばりつくようにくっついていますが、実は肩甲骨は羽のように立てることができるのです。

「『立甲』できたところでどうなるの?」と思われるかもしれませんが「立甲」ができると、腕・肩の動きの自由度広がり、連動させることができる筋肉も増えるため、スポーツ・武道でのパフォーマンスが向上するのです。

私は以前から「立甲」することができましたし、肩甲骨を自由に使うための鍛練を剣術の稽古の中で行ってきましたが、最近『肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる』という本を読んで「立甲」の知識やトレーニング法を整理することができました。

とても良い本だったので、スポーツや武道を実践している人にはおすすめです。

「立甲」のメカニズム、メリット、トレーニング法などについて詳しく書きました。

「立甲」のメカニズム

まずは「立甲」を見てみましょう。「立甲」とは、以下の画像のように肩甲骨を立てることです。

「立肩」肩甲骨を立てる方法

私は10代のころに空手の稽古を通じて自然にできるようになりました。

私はたまたまできるようになったのですが、武道・スポーツをやっていてもできる人、できない人がいるそうです。おそらく、武道・スポーツをやっていない人なら、もっとできないのだと思います。

それでは、まずは「立甲」について詳しく解説します。

「立甲」とは肩甲骨が30度以上立つこと

「立甲」とは、先ほどの画像のように肩甲骨が背中から立ち上がることです。

この本の定義によると、立甲は肩甲骨が背中から上方向に30度以上、理想を言えば40度〜50度前後まで立ち上がることなのだそうです。実際にやってみると、おそらく立甲ができない人はどうやって立てれば良いのか分からないでしょうし、動いてもわずかに立つかどうか、という程度だと思います。

私も妻に実際にやってみてもらいましたが「どうやったら肩甲骨が立つのかまったく分からない」と言っていました。意識してトレーニングしないと、そもそも肩甲骨に意識を持つことも難しいのだと思います。

四足動物の肩甲骨は柔らかく立っている

この本によると、人間よりはるかに運動能力が高い動物は、肩甲骨が柔らかく立っているのだそうです。

実際、チーターの画像を見てみると肩甲骨が非常に柔軟で、かつ胴体の側面をダイナミックに動いていることが分かります。

立甲できるとパフォーマンスが上がる

人間は二足歩行に進化する途上で肩甲骨が背中側にへばりつくような形になったのですが、その結果腕を身体の横側に広く使えるようになりました。

しかし、動物のように肩甲骨を立てて使うことは苦手になったようです。

そのため、どれだけトレーニングしても肩甲骨を背中から90度立てることはできないのですが、トレーニング次第では最大50度くらいまでは立てられるようです。

では、立甲できるとどんなメリットがあるのでしょうか?

「立甲」のメリット

立甲できると、以下のようなメリットがあるのだそうです。

肩甲骨の自由度の向上

立甲できると、肩甲骨と腕の角度を限りなく一致させて動かせるようになるため、その分動きの自由度が上がり、体幹の広い範囲の筋肉が使えるようになります。

その結果、腕・肩を使った運動のパフォーマンスが向上するのです。

体幹のブレがなくなる

立甲できると肩甲骨が肋骨から離れて動くことができます。立甲ができないと、腕・肩を大きく動かそうとすると肋骨も一緒に動いてしまいます。その結果、胸椎の11番、12番、腰椎の1番〜3番(合わせて「自由脊椎」と著者が概念化している)がブレて動いてしまいます。

自由脊椎が動くと体幹がブレるため、軸がブレてパフォーマンスを邪魔するのだそうです。立甲できると、肩甲骨が肋骨から自由になるため、自由脊椎が動きづらく、その結果体幹のブレも抑制されるのだそうです。

股関節周りの使い方が向上する

立甲ができると、下半身の動きにも良い影響を与えるそうです。

身体の使い方は一部が向上すると、他の部分にも良い影響を与えるというのが著者の考えです(著者は四肢同調性と概念化しています)。

人間の下半身も、実は腰骨と仙骨で構成される「仙腰関節」がわずかに動くのです。このが動くと股関節周りのインナーマッスルが使えるようになり、その結果下半身を中心とした運動のパフォーマンスが向上するのだそうです。

怪我が予防できる

立甲できると肩甲骨の自由度が高くなるため、肩や肘にかかる負担が減るため、怪我や疲労も減ります。

また、体幹・軸がブレずらくなるため、身体全体のパフォーマンスが向上し怪我が予防できるようです。

このように立甲にはたくさんのメリットがあり、

  • 野球のピッチングやスイング
  • サッカーのスローイン
  • バスケのチェストパス
  • ゴルフのスイング
  • 卓球やテニスのスイング
  • 格闘技のパンチ

などなどあらゆるスポーツ・武道でのパフォーマンスの向上に大きな影響を与えます。

『肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる』の中では、立甲できるようになるための具体的な方法がたくさん解説されているので、ぜひ読んで実践してみてください。

ちなみに、私がずっとやっている二天一流剣術では、両手で刀を操らなければならないため、肩甲骨の自由度を高めることがとても大事です。そのため、肩甲骨を自由に使うための鍛練法がたくさんあります。

最後に二天一流玄信会で行っている鍛練法について紹介します。

二天一流における肩甲骨のトレーニング

私たちは、剣術の稽古の中で以下のような鍛練法を行っています。

  • 多敵之位胸背部開発法
  • 喝咄胸背部開発法
  • 基本錬技

順番に紹介します。

多敵之位胸背部開発法

多的之位胸背部開発法とは、胸背部(胸と背中の広い範囲)を左右に大きく使うことで、肩甲骨の自由度を高める鍛練法です。木刀の重みを使って肩甲骨周りをストレッチできるため、肩甲骨の動きが非常に高まります。

喝咄胸背部開発法

喝咄胸背部開発法とは、胸背部(胸と背中の広い範囲)を上下に大きく使うことで、肩甲骨の自由度を高める鍛練法です。

「喝(かつ)」で上に振り上げ「咄(とつ)」で切り下げます。これも木刀の重みを使って肩甲骨を大きくストレッチすることができます。

基本錬技

基本錬技とは、二天一流の基本的な動きを身につけるための基本的な鍛練法です。以下のものがあります。

  1. 縦抜き打ち
  2. 横抜き打ち
  3. 下抜き打ち
  4. 正面切り
  5. 袈裟切り
  6. 受流し
  7. 切り上げ切り返し
  8. 折敷飛違正面切り

この中のそれぞれの鍛練の中で、すべて肩甲骨を柔軟に使うことがポイントとされています。

特に「正面切り」の鍛練法では、肩甲骨を大きく使って切りの動きを鍛練できるように作られているので、この稽古を通じて肩甲骨を自由に使えるようになります。

剣術という特殊な世界での鍛練法ではありますが「立甲」のトレーニングと同様、肩甲骨を自由に使ってパフォーマンスを向上させられる有効な鍛練法だと思います。

あなたも工夫してトレーニングしてみてください。

まとめ

「立甲」のメカニズムやトレーニング方法について、理解できたでしょうか?

「立甲」できるくらいに肩甲骨を自由に使うことができれば、本当にパフォーマンスが向上すると思います。私はこれまで武道の世界でしか鍛練したことがなかったので、このようにメカニズムやトレーニング方法が体系化されているとは知りませんでした。

「立甲」以外にも、身体の使い方を変えることでパフォーマンスを向上させられるポイントはたくさんあると思うので、これからも実践しつつ情報を集め、工夫し続けたいです。

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