練習・トレーニング

昔の武道家がものすごい筋肉を持っていたのは「根性」の強さゆえかもしれない

低負荷のトレーニングでも筋肥大できる

今ほどウエイトトレーニングなどが発達していない時代の武道家でも、ものすごい筋肉を持っている人の写真が残っています。

有名どころでは、極真空手の創始者である大山倍達や、史上最強とも言われる柔道家木村政彦、他にも江戸末期あたりの力士の写真を見ると、現代の格闘家のように筋骨隆々だったりします。

しかし、当時は現代のようにウエイトトレーニングの理論は発達しておらず、やっていたトレーニングとしては「〇〇㎏のバーベルを1000回あげる」など「回数をめちゃくちゃこなす」ようなものだったようです(これは木村政彦がやっていたトレーニングだったと思います)。

現代の常識からすれば、1000回もあげられるようなウエイトでトレーニングしても筋肥大はしないはず。

それなのに、昔の武道家にもものすごい筋肉を持つ人がいるのはなぜなのか、ずっと疑問でした。

そんな疑問を、最近読んだ本を読んで解決できました。

それが東京大学の石井直方教授が書いた『石井直方のトレーニングのヒント』です。石井直方教授とは、東京大学の教授で筋肉研究の第一人者として有名な方です。自身も若い頃はボディービルダーとして活躍していました。

結論を言えば、昔の武道家が回数重視のトレーニングをして筋肥大できていたのは「めちゃくちゃ根性があったから」なのかもしれません。

筋肉は「代謝的なオールアウト(疲労困憊)」になると肥大する

筋肉を成長させる(肥大させる)には、以下のように大きく2つの方法があります。

  1. 力学的な刺激を強くする
    →重いウエイトを使い、筋肉に強い負荷をかける
  2. 代謝的な刺激を強くする
    →筋肉を疲労困憊になるまで追い込む(オールアウト)

実際のトレーニングでは両方が重要なのですが、②のメカニズムは、筋トレ初心者にはあまり知られていないように思います。私自身「オールアウト」という言葉は知っていても、その仕組みはよく知りませんでした。

詳しく解説します。

代謝的な疲労とは、筋肉を動かすエネルギーが少なくなった状態です。そして、このエネルギーが枯渇した状態がオールアウトで、たとえば「疲れすぎてまったく腕が上がらない」という状態になります。これは、軽い負荷でトレーニングしているときに起こりやすいようです。

しかし、実際には筋肉をエネルギーがなくなる前に、体が疲労を感じて動きをやめようとします。つまり、まだ筋肉が完全に疲労しているわけではないのに「もう動けない」という状態になるのです。これは特に、重い負荷をかけてトレーニングしている時に起こるようです。

筋肉を成長させるためには、力学的な疲労も代謝的な疲労も両方が大事なのです。

つまり、重いウエイトで力学的に強い刺激をかけることと、軽いウエイトで代謝的に強い刺激をかけることの、両方をトレーニングに組み込むことが大事だというのが、現在の筋トレのセオリーです。

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「回数をこなすトレーニング」でも筋肥大できる研究結果

さて、ここからが本題です。

石井教授が、この本の中で紹介しているのが、石井教授の研究室の学生が行った「低強度でも追い込めば筋肥大できるのではないか」という研究です。

なぜこんな問いが出てきたのかというと、低負荷でも回数をこなせば代謝的な疲労が限界を達する(オールアウトする)のだから、そこまで追い込めば、低負荷でも筋肉が成長するのではないか?と思ったからなのだそう。

結果から言えば、実際に低強度でトレーニングしても、徹底的に追い込めば筋肥大が見込めることがわかりました。

先ほど、筋肉を成長させるためには「力学的な刺激」と「代謝的な刺激」の両方が大事だと説明しました。しかしこれは、どちらか一方だけでも十分筋肉を成長させることができます。

そのため、低負荷でも徹底的に回数をこなしてオールアウトするほどまで追い込めば、十分に筋肉を肥大させることができる。そのような研究結果が出たのです。

※ただし、負荷が小さすぎると単なる有酸素運動になるため、筋肉の成長は見込めないようです。

以上の研究結果を見ると、昔の武道家が何百回とか1000回とかの回数重視のトレーニングをして、それでものすごい筋肉を作ることができたことも説明できるのです。

低負荷のオールアウトは非常に辛い

このように説明すると「それなら低負荷でも頑張れば筋肉を増やせるのか」「負荷が少ない自重トレーニングでもマッチョになれるのか」と思われるかも知れませんが、石井教授は以下のように注意しています。

実験結果だけ聞くと、「なんだ、がんばって何セットもやれば軽い負荷でもトレーニング効果が出るのか」と思うかもしれません。たしかに、その通りです。しかし、それは口で言うほど簡単なことではありません。トレーニングそのものが、ものすごくキツいからです。

低負荷でオールアウトまで体を追い込むというのは、重い負荷を使ってトレーニングするより非常に辛いことなのだそう。

そのため、「低負荷でオールアウトまで追い込む」というトレーニングは、ど根性を持った昔の武道の達人なら可能だったとしても、現代人には難しそうです。

少なくとも、筋肉を成長させることだけを考えるならば、この本に書かれているような理論にのっとって、「力学的な刺激」と「代謝的な刺激」をうまく組み合わせてトレーニングするべきでしょう。

具体的な筋トレの回数、セット数や頻度、負荷のかけかたなどは、『石井直方のトレーニングのヒント』に詳しく書かれているので、筋トレの基本的な知識を知りたい人はぜひ読んでみてください。

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