今月は新年早々、運動していた時に腰を痛めかけ、数日は腰に負担を掛けないように生活をしていました。
そこでここ2週間ほどは、腰を鍛える目的で、軽い重量のデッドリフトをはじめました。継続的にデッドリフトに取り組んだのははじめてです。
さて、古武道の世界では、筋トレは何となく避けられていることが多いように思います。
その理由は、
- 伝統的な鍛練だけで十分だから
- 古武道の世界の強さは技によるため、筋トレは必要ない
- 筋トレして鍛えた筋肉は使えない、邪魔になる、技を鈍らせる
などがあると思います。
「古武道と筋トレ」はたくさんの人が論じていることですし、今さら私が論じることでもないかもしれませんが、私なりの見解を書いてみます。
古武道に必要な2つの体力
まず、古武道において必要とされる体力には、
- 練習に耐えられる体力
- 勝負に耐えられる身体
の2つがあると考えています。
練習に耐えられる体力
練習に耐えられる体力とは、正確に言うと「正しい練習ができる体力」です。
たとえば、剣術の稽古でも、足腰が疲れて重心が上がったり、握力がないために手の内が崩れたりすることがあります。
もちろん、実際の練習では疲労に耐えて行うことで体力が向上する側面はあります。しかし、本当に練習で行うべきは、技そのものを上達させていくことです。疲労で身体が崩れていれば、正しい形で鍛練することができず、技そのものの上達の障害になります。
したがって、正しい練習ができるために最低限の体力を持っておく必要はあります。
そのため、正しい練習をするための最低限の体力を鍛えるために、ある程度の筋トレ、もしくはそれに変わる鍛練は必要だと考えています。
ちなみに、剣術を指導する当会の場合は「前八」という、入会後の最初に行う鍛練法の中で「手の内」「足構え」などを鍛えるようになっており、初心者にありがちな「体力がないため身体、技が崩れてしまう」という問題をカバーできるようになっています。
勝負に耐えられる体力
武道における体力は、本質的には勝負に耐えられるものである必要があると思います。
勝負とは、古武道・武術の世界では、昔の武士たちが行っていた命がけの戦いにあると考えます。
もちろん現代において命がけの勝負など行うことはないのですが、古武道・武術では、昔の武士達が残した技を正しい形で残すために、命がけの戦いを想定して稽古するのです。
そして、そんな命がけの戦いを想定するのであれば、それ相応の身体を創る必要があります。
そこで考えなければならないのが、現代人と昔の武士の体力の違いです。日常的に身体を使い鍛練していた昔の武士と、生活の大部分をテクノロジーに頼っている現代人との間には、大きな体力差があるはずです。
したがって、勝負に耐えうる身体を創るというより本質的な意味でも、身体を鍛練する必要があります。
また、身体創りという点ではもう一つ大事なことがあります。
武技形成の土台になる人間体
武道の技のことを武技と言い、武技を身につけた身体のことを武道体と言います(これは当会で採用している考え方ですが、もともとは南郷継正先生の理論にある考え方です)。
そして、より高いレベルの武道体(武道的な動きが身についた身体)を形成するためには、より強い人間体(武道体の素材としての身体)が必要だと考えています。
強い人間体が土台となるからこそ、その上に建つ武技が強固になるという考えです。
したがって、古武道の修業においても身体の強さを求めることはとても大事な事だと私は考えているのです。
とは言え、やみくもに身体を鍛えれば良いとも思っていません。むしろやみくもに鍛えて大きな身体を創ることには弊害があると思います。
武技をレベルアップさせるための筋トレの注意点
古武道における身体創りは「武技の形成を邪魔しない」ように行うことがポイントだと思います。
筋トレをすると特定の筋肉を使うことに意識が向きがちです。たとえばベンチプレスをすれば大胸筋や上腕三頭筋、三角筋が鍛えられ、筋トレをしている時間以外もそこに意識が向きやすくなります。また、スクワットをすれば大腿四頭筋が鍛えられ、そこに意識が向きがちになってしまいます。
しかし、剣術の動きの中で必要とされる筋肉は、ハムストリングスや内転筋、大臀筋、肩甲骨周辺のインナーマッスル等です。そのため、これらの部位が鍛えられる種目の筋トレでなければ意味がありませんし、むしろその他の筋肉に意識が向くようになると武技の鍛練を阻害してしまいます。
したがって、筋トレをする上では「武技の形成を邪魔しないか?」「自分の行っている武技で必要とされる筋肉か?」慎重に検討してトレーニングすることが大事です。
私が行っている身体創り
私は上記のようなことを注意しつつ、以下の種目の鍛練をしています。
- デッドリフト
→腰痛予防のため、体幹の安定のため - レッグプレス
→ハムストリングス、大臀筋等の下半身の筋肉を鍛えるため - スクワット
→同上 - 体幹トレーニング
→怪我予防、体幹の安定のため
なお、当会では「前八」という鍛練法が体系立てられているため、当然この鍛練法も行いつつ、プラスαでやっているのが上記の筋トレです。またこれ以外にも、主に健康や基礎体力作りのために細々とした種目も時々やってます。
ちなみに扱う重量はそれほど重くなく、身体への負担が少ないようにトレーニングしています。
まとめ:より高いレベルの武技形成を目指して
私は先生と稽古するときに「力に頼らずに鍛練していることがよく分かる」とほめてもらったことが何度もあります。
初心者段階で単純な腕力頼りの動きをすると、より本質的な身体の使い方が身につかないため、先生からも力に頼らずに最大限の技ができるように、と指導されていました。そのためその通りにやっていただけなのですが、身体の力を抜いて技を行うのはそれなりに難しいです。
したがって、私の考えでは初心者は筋トレはせず、まずは「前八」のような鍛練法のみで身体を鍛え、稽古の時に無駄な力を入れないようにすることが大事だろうと思います。
そしてある程度の武道的な身体の使い方ができてから、筋トレで素材としての体力を向上させていくのはありでしょう。
私自身、筋トレをして「技量が落ちた」ということにならないよう、十分に注意しなければならないなと思っています。武道の鍛練は奥が深くて面白いですね。
■剣術師範、整体師(身体均整師)、ライター。セルフケア・トレーニングのオンライン教室運営中。
■池袋周辺で施術・トレーニングを行います。【旧:ふかや均整院】
■現代人の脳・感覚の使い方の偏りや身体性の喪失を回復するために【suisui】という独自のプログラムをオンライン教室中心に運営しています。