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『ニューロダイバーシティの教科書』(金子書房)の要約・感想

2021年8月19日

『ニューロダイバーシティの教科書』(金子書房)を読みました。

最近、仕事で発達障害に関する本を多く読んでいたのですが、もう少し踏み込んだことを知りたくなり検索していたところ、脳神経の多様性をあらわす「ニューロダイバーシティ」という言葉を知りました。

このような面でも多様性があるのかと驚き、新たな視点が得られたように思います。

この本を読んで学んだことをまとめます。

発達障害の存在が広く知られ、またその社会における問題も多く議論されるようになってきたため、多くの人に読んでみてほしいテーマです。

1章:『ニューロダイバーシティの教科書』の要約

ニューロダイバーシティとは、発達障害のことを「障害」として捉えるのではなく、脳神経の多様性として捉える考え方である。1990年代後半に生まれた、比較的新しい考え方で、単なる多様性だけでなく社会運動の意味も含んでいる。自閉症スペクトラムの当事者たちによって生み出された言葉である。

発達障害はそもそも、発達障害の人々が持つ特性を「障害」として捉える考え方である。この社会は、脳神経的な多数派によって作られているため、その社会において少数派は、普通とは異なるため「障害」とされている。

しかし、何が「障害」で、「個性」で「才能」なのかは、社会によって異なる。そのため、発達障害を「障害」ではなく、生まれ持った脳神経の機能の違いとして一般的に捉え、理解してもらうというもの。

1-1:自閉文化

「自閉文化」とは、自閉症スペクトラムを劣っている状態ではなく、独自の文化をもった少数者として考える考え方である。自閉文化を持つ人々は、多数派の人々とは異なる行動様式、価値観を持っている。

現在、一般的には発達障害の人々の行動様式や価値観は「治すべきこと」として捉えられるが、たとえば日本の来た外国人の持つ行動様式や価値観を、「治すべきこと」と考えることはない。同じように、発達障害者が持つ特性を、文化として捉える考え方が自閉文化である。

1-2:ニューロダイバーシティの捉え方

そもそも、ニューロダイバーシティの考え方では、人々には脳・神経の「特性」だけがあると考える。その「特性」を人間の価値判断で「才能」「個性」「障害」と言ったりする。

医学モデルでは、発達障害は「障害」として、治そうとする。ニューロダイバーシティは、この医学モデルへのアンチテーゼである。

発達障害は、「困難の原因が明確にできない」「治すべきものではない」という領域の問題であり、この領域では医学モデルは苦手なのである。

1-3:自閉症スペクトラムの文化

自閉症スペクトラムは、一つの文化である。

自閉症スペクトラムの特徴は、社会脳の特異性である。たとえば、多数派の脳は他人の視線などを特別扱いする。これは「社会脳」の仕組みである。社会的な情報処理に特化したメカニズムがある。そのため、社会脳が強く働くことを前提とした価値観、文化が形成される。

自閉症スペクトラムは、社会性の障害である。自分で人の視線を回避しているのではなく、脳の現象で視線を回避してしまう。脳の機能で、社会的な情報を特別扱いしない特性がある。

このような特性を、社会性のためにトレーニングさせようとするのは、多数派の文化の押し付けである。

自閉症スペクトラムの注意は、人よりもモノに向きやすい。意図すれば人に注意を向けることもできる。

1-4:自閉症スペクトラムの文化の特徴

①細部に焦点づけられる

細部をみて小さな違いを見つけるのが得意。一方、全体を大枠で、スピーディに捉えるのが苦手。

統合処理能力の欠如ではないというのが、近年の研究。低次(単純な知覚)の処理が強く、高次な情報処理より優先されるという仮説。この特性があるため、情報の細かい分析が得意。

また、この脳の機能があるため、感覚過敏にもつながっていると考えられる。

過敏の人は、触覚の時間情報処理精度が高い。GABA(脳内神経物質)が低下し、神経の働きにブレーキがかからないという特性。

➁人よりモノに先に出会い、世界の認識を広げていく

自閉症スペクトラムの人は、人よりモノに先に出会う。社会脳の刺激が少ないため、孤独を感じない。多数派の人は人に注意し人を中心に世界を認識していくが、自閉症スペクトラムの人は人以外の環境(自然、モノ、論理など)に楽しみを見つける。そのため、論理的正しさを重視するようになる。

③強化された知覚特性

自閉症スペクトラムは、世界をありのままにとらえる。

「低次の情報処理が優位で知覚レベルの情報処理が多いという特性は、神経学的な多数派の人たちに比較して情報の解像度が高い状態で世界と向き合っているという言い方もできる」

正確に知覚できる強みがある一方、大まかな把握は苦手。

自閉症スペクトラムはの脳は、可能な限り実態に近い形で知覚しようとする脳とも言える。論理的な厳密さが求められる場が向いている。そのため、シリコンバレー症候群のように、IT系の仕事が向いている。

2章:『ニューロダイバーシティの教科書』の感想

発達障害の人に対しては、現代ではトレーニングによって社会に適応させるような制度もあるようです。しかし、この本によればそういうトレーニングによって、定型発達の人に合わせさせようとすることが、発達障害の人たちを受け入れることになっていないと。

そうではなく、発達障害は脳の多様性なのだから、その多様性を受け入れて、無理に特性を矯正しようとせずに、特性を活かせる場で生活できるようにしよう、ということでしょうか。

発達障害を「異常」としては捉えないという点に、新鮮さを感じました。

私が大学院にいたころ、まわりには「発達障害では?」と思われるような特性の人が多くいましたが、この本を読むと研究職、IT系などの仕事では活躍しやすいのかもしれません(ASD系が特に)。

他の発達障害系の本とは異なる視点から書かれたものですので、一読をおすすめします。

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