「正しい姿勢での立ち方ってどういうものだろう」
「正しい姿勢で立ってるつもりなのに疲れる」
このようにお悩みの方に向けてこの記事を書いています。
結論から言えば、正しい姿勢で立つとは、下記のポイントを押さえて立つことだと私は考えています。
- 足の接地面は3点を意識
- 脚の裏面全体を引き上げる
- 膝は伸ばしすぎず真ん中でキープ
- 骨盤を立てる
- 背骨を伸ばす
- 肋骨を締める
- 肩の力を抜く
- うなじを伸ばす
これらのポイントが押さえられていると、軸がしっかりとできて、それ以外の部分の余計な緊張がなくなりリラックスできます。
そのため、日常生活でも疲れにくくなりますし、スポーツや武道など身体を使うことをやっている方は、より競技力を向上させることができるはずです。
そこでこの記事では、
- 正しい姿勢で立つことが大事な理由
- 正しい姿勢で立つことについての誤解
- 正しい姿勢で立つためのポイントとトレーニング
について詳しく解説します。
この記事で説明する立ち方だけが正しい!というわけではありませんが、1つのやり方として参考にしてみてください。
1章:正しい姿勢で立つことが大事な理由
それでは、まずは正しい姿勢で立つことが大事な理由から説明していきます。
具体的な立ち方から知りたい場合は、3章をお読みください。
理由①正しい姿勢で疲れにくくなる
まず、正しい姿勢で立つことができれば、立ち続けていても疲れにくくなります。
なぜなら、正しい姿勢で立つとは、最小限の筋力で立つということだからです。骨などの人体の構造を最大限活用することで、立っている間に働く筋肉を最小にできるため、結果的に疲れにくくなるのです。
そのため、立ち仕事の方や、家事や子育てで立っている時間が長いという方は、ぜひ正しい立ち方を身につけてください。
理由➁正しい姿勢なら緊張が少なくなり精神的に落ち着く
繰り返しになりますが、正しい姿勢で立つことは最小限の筋力で立つことになります。
そのため、身体から余計な緊張がなくなり、精神的に落ち着きます。
身体が余計に緊張していると「肩こり」「首こり」「腰痛」などの原因になるだけでなく、力みから精神的にも興奮状態になってしまいます。
そのためリラックスすることが大事なのですが、ただ「リラックスしてください」と言われても、なかなかできないものです。
リラックスするためには、正しい姿勢になって、適切な部位に力が入り、それ以外は力が抜けることが大事なのです。ただ脱力を意識するだけでは、あまりリラックスにならないのです。
そのため、正しい姿勢で立つことでリラックスでき、心身が健康になるのです。
理由③正しい姿勢で動くと怪我しにくく、パワーが出やすい
正しい姿勢で立てるようになることは、スポーツや武道、ダンスなどの身体を使うことをやっている方にとっては、競技力が向上することにも繋がります。
たとえば武道では、正しい姿勢で立つことで体幹が安定するため、突き、蹴りなどの威力が非常に強くなります。正しい姿勢で立つことで身体がまとまり、そのまとまった重みを相手に伝えやすくなるためです。
また、正しい姿勢で立って余計な力みがなくなると、体幹は安定させたまま腕、脚をリラックスさせ自在に動かせるようになります。
そのため、怪我しにくく競技力全体が向上するのです。
このように、正しい姿勢で立つことには多くのメリットがあるのです。しかし、正しい姿勢で立つ重要さは知られていても、実際に正しく立てている方は少なくないようです。なぜなら、正しく立つことについて様々な誤解があるからです。
そこで次に、正しく立つことについての誤解を説明します。
2章:正しい姿勢で立つことについての誤解
「正しい姿勢で立つ」と言うと、下記のような間違った姿勢を取ってしまう方が少なくありません。
- 胸を張る
- 腰を反る
- 顎を引きすぎる
- 肩甲骨が上がる
- つま先重心になる
いわゆる「気を付け」のような力んだ間違った姿勢を「正しい姿勢」だと誤解して身体にしみついてしまっている場合もあります。
しかし上記のような「気を付け」のような姿勢は、余計な力みが多く、疲れやすい、コリやすい姿勢です。
なぜなら「胸を張る」「腰を反る」「顎を引きすぎる」というのは、背骨の自然なS字の湾曲を崩してしまうため、身体にかかる重力を背骨で支えにくくなるからです。
骨で支えにくい分、筋肉の余計な緊張で支えなければならなくなります。
また「肩甲骨が上がる」というのは、肩甲骨が正しい楽なポジション(中間位)にないということであり、これも疲れる原因です。とくに首、肩がこりやすくなります。
「つま先重心になる」というのも問題です。体重は骨で支えると筋肉の使用が最小限になるのですが、つま先重心だと特に膝から下に力みが生まれるためです。
このように「正しい姿勢で立とう」と思っても、これまでに身についた思い込み・間違った認識のせいで、むしろ疲れやすい姿勢で立ってしまっている場合は少なくないのです。
もし思い当たることがあれば、これから説明する正しい姿勢で立つためのポイントをしっかり読んで実践してみてください。
3章:正しい姿勢で立つためのポイントを図解
正しい姿勢で立つための主なポイントは以下のものです。
- 足の接地面は3点を意識
- 脚の裏面全体を引き上げる
- 膝は伸ばしすぎず真ん中でキープ
- 骨盤を立てる
- 背骨を伸ばす
- 肋骨を締める
- 肩の力を抜く
- うなじを伸ばす
最初からすべてを完璧に行うことは難しいかもしれません。そのため、できるものからアバウトにでも実践してみることをおすすめします。
日常生活の中で取り入れてみてください。
3-1:足の接地面は3点を意識
立つ姿勢について下からポイントを説明していきます。まず足です。
結論から言えば、下図の通り、足の裏の「母指球(親指の付け根)」「小指球(小指の付け根)」「踵の下端」の3点を意識して立つことが大事です。
実は、健康的な人間の足には3つのアーチがあります。「土踏まず」は内側のアーチとしてよく知られていますが、足の外側にもアーチがあり、足の甲には横向きのアーチもあります。
このアーチがつぶれると、
- 足に痛みが出る
- 歩くときに無駄なエネルギーが必要になる
- 足の歪みから全身に悪い影響が出る
といった問題が出てくるのです。
しかし、多くの方が「つま先重心」「踵重心」と前後に偏った立ち方をしていたり、土踏まずの方に体重をかけてしまっていたり、足の外側に体重を偏らせていたりすることもあります。
その結果、足の使い方が「ベチャッ」と重力に負けたようなものになってしまっています。
そのため「母指球(親指の付け根)」「小指球(小指の付け根)」「踵の下端」の3つの点を意識して立つことが大事なのです。
この3点に等しく体重が乗るように意識することで、徐々に正しい立ち方ができるようになっていきます。
3-2:脚の裏面全体を引き上げる
次に、脚全体の使い方についてです。
脚も、足と同じく重力に負けて「ベチャッ」とならないことが大事です。
結論から言えば、脚の裏面全体を上に引き上げるような意識で立つと、正しい姿勢になりやすいです。
逆に、重力に負けた立ち方になると、脚の内側のラインや外側のラインに寄っかかるような立ち方になり、内側に寄っかかると「X脚」に、外側に寄っかかると「O脚」になりやすいです。
このような立ち方では、年を取るほど脚が変形し、さまざまな痛みや不調に繋がってしまいます。
そのため、脚の裏全体を引き上げる意識で、脚の真ん中に体重をかけるようにしてください。
また、こうした立ち方をすることで太ももの裏側の筋肉を使って姿勢を維持できるようになります。
3-3:膝は伸ばしすぎず真ん中でキープ
次に、正しい姿勢で立つための膝の使い方についてです。
膝の使い方は、多くの人が下記のようになっているようです。
①膝を伸ばしきらず曲げた状態で、太ももや腰を余計に緊張させた立ち方
➁膝を真っすぐ伸ばしすぎ、膝関節に寄っかかるような立ち方
この立ち方はどちらも健康によくありません。
まず①は特に中高年以上の方に多いです。これは、腰が曲がったり、骨盤全体が前に出ることで大腿骨の角度が傾き、膝を曲げないとバランスを取れない、という状態です。
このような立ち方では、腰や太ももを常に緊張させることになるため、疲れやすいです。また、常時歪んだ体の使い方をしているため、全身に不調やコリが出てきやすいです。
➁の膝を伸ばし切った立ち方は、一見「正しい姿勢」に見えます。しかし、実はこれも長く続けると不調に繋がり得ます。このような立ち方は、若い人や体が柔らかい人、運動をしている人にも多いです。
この膝を伸ばし切った立ち方では、膝の靭帯に寄っかかるような状態になります。そのため、特に膝が柔らかく反対側に反りがちな方(女性に多い)の場合、膝の靭帯に常に負荷がかかります。
靭帯が常に伸ばされているため、この立ち方を続けると将来的には膝を悪くしてしまう可能性があります。
そのため、膝は伸ばし切らず、体重が真っすぐ落ちる位置でキープすることが大事です。なるべく、膝を伸ばしきって膝関節によっかかるような力はかけないようにしてください。
膝が反りがちな人がこの立ち方をするには、膝周りに多少の筋力が必要になります。そのため、ヨガやピラティスなどの自重を使うような運動をして、ある程度トレーニングすることをおすすめします。
3-4:骨盤を立てる
さて、正しい姿勢で立つポイントについて下半身を説明してきましたので、次に骨盤について説明します。正しく立つ上で重要なのが骨盤を立てることです。
しかし多くの人は「反り腰(骨盤前傾)」もしくは「猫背(骨盤後傾)」になっていて骨盤がニュートラルなポジションにありません。
その結果、たとえば下記のような状態になってしまいます。
- 反り腰:腰への負担が大きく腰痛の原因になる。また全身が緊張気味で疲れやすい。
- 猫背:特に上半身が丸まり肩こりや首こりが強い。呼吸が浅く元気が出ない。
骨盤は反り腰でも猫背でもなく、その中間で真っ直ぐ立っていることが大事なのです。反り腰気味の人は少し丸めるくらいの姿勢にすることを意識し、猫背気味の人は普段よりも少し骨盤を前傾させ反らせるくらいの意識を持った方がいいでしょう。
ここでのポイントは、背中側とお腹側の筋肉を等しく使うことです。
反り腰気味の人は背中側の筋肉が余計に緊張している状態になっています。猫背気味の人は、お腹側が緊張して縮まっている状態になっています。
どちらも筋肉の使い方がアンバランスになっているため、疲れやすくこりやすいです。
そのため、骨盤をニュートラルなポジションでキープすることが重要なのです。
骨盤をニュートラルなポジションにするのが難しいという方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方は、これから説明する。背骨を伸ばす意識や肋骨を締める意識からしてみるとやりやすいかもしれません。
3-5:背骨を伸ばす
正しい姿勢で立つためには、背骨を伸ばす意識が必要不可欠です。簡単に言えば、背骨を上下に引っ張り合うような力を意識することで、正しい姿勢で立てるようになるのです。
背骨を伸ばす上でのポイントは「背骨のS字カーブを維持したまま上下にピンと張る」ということです。
本来人間の背骨には、下記の図のような軽い湾曲があります(生理的湾曲)。
しかし、多くの人はこの生理的弯曲が崩れてしまい、自然な形から歪んでしまっているのです。
具体的には「反り腰」「猫背」「胸を張る」「ストレートネック」などがそれです。
さらに自然なS字は維持されていても、背骨の力が重力に負けてしまいグチャッとつぶれるように負荷がかかっている方も多いです。
このような力のかかり方では、体が疲れやすくこりやすくなってしまいます。
そこで下記のように背骨を伸ばす意識を持ってください。
【背骨の伸ばし方】
背骨が、自然なS字カーブが描けているか自分でチェックする
- 軽く顎を引いて、うなじを真上に向かって伸ばす
- 座骨を真下に向かってまっすぐ伸ばす
- お腹の力が抜けて肋骨が開きやすい場合、肋骨とお腹に力を軽く入れて胸が開かないようにする
- 背骨が軽くピンと張られている実感があればOK
背骨を伸ばす方法については、下記の記事もご覧ください。
https://fukafuka-web.com/spine-stretch/
3-6:肋骨を締める
先ほども少し触れましたが、正しい姿勢で立つためには肋骨を締める意識が重要です。
肋骨は呼吸の度に、息を吸うときには外に向かって開き、息を吐く時には内に向かって縮むように動きます。
また、肋骨は背中側で一部の背骨と繋がっているため、背骨と連動して肋骨が動くことも多いです。特に「正しい姿勢にしよう」として胸を張ると、肋骨とくっついている背骨が後ろに反るように動き、肋骨が開いてしまいます。
こうなると背中側が余計に緊張し、逆にお腹側は必要以上に弛緩してしまっている状態になります。
これでは長く立つほど疲れてしまうため、肋骨を開いてしまうタイプの人は「肋骨を締める」という意識を持つことが重要になります。
具体的には、下記の図のように脇を締める力と連動させて、肋骨を締める意識を持ち、軽くお腹側でも体幹全体の重みを支えるように意識してみてください。
こうすることで背中側にかかる負担が少なくなり、余計な不調やこりを予防できます。
3-7:肩の力を抜く
正しい姿勢で立つために肩の力を抜くことは非常に重要です。
肩の力を抜くために、まずはなぜ肩に力が入ってしまうのかを知っておきましょう。結論から言えば、肩に力が入ってしまうのは肩甲骨がニュートラルなポジションにいないからです。
肩甲骨は背中側の肋骨の周りを大きく動き回ることができます。逆に言えば、自由度が高いために、正しいポジションがわからなくなることも多いのです。
肩甲骨の正しいポジションとは、左右の肩甲骨が離れすぎたり寄りすぎたりせず、ちょうどいい中間にあることです。ここがニュートラルなポジションであり、肩が一番下がる部分でもあります。
このポジションで肩甲骨をキープするには、肩甲骨の内側の下の端っこどうしを、少しくっつけるように意識すると良いでしょう。
また、上腕骨を両方ともやや外にひねる(外旋させる)という意識も大事です。
このように意識することでいわゆる「巻き肩」を防げます。
この二つの点を意識しつつ、うなじや首の付け根辺りの筋肉が、だらっと溶けるように力が抜ける意識をしてみてください。
このように、肩の力を抜くには、
①肩甲骨が正しいポジションにあること
➁正しい部位に最低限の緊張があること
という二つの前提が大事になるのです。
3-8:うなじを伸ばす
正しい姿勢で立つためのポイントとして、最後に首のポジションについて説明します。
そもそも成人の頭は体重の10%ほどの重さを持つと言われており、50キロの方なら5kgの重さがあります。これは首だけで保持しているため、少しでも姿勢が悪ければ首こりや肩こりの原因になってしまうのは当然です。
しかも、頭蓋骨に対して首の位置はやや後ろ側についているため、頭は前側に落っこちやすいのです。そのため、現在では多くの方がスマホやパソコンを見すぎているために、頭が前に落ち、顎が出てしまうストレートネックになってしまっています。
正しい姿勢で立つには、重い頭を肩の上にしっかりと乗せて、出来る限り骨の力で頭の重さを支えるポジションを覚えることが大事です。
そこで重要なのが「うなじを伸ばす」という意識です。軽くアゴを引いてうなじを真上に伸ばすように意識することで、首が正しいポジションになります。
こうして、首を伸ばす力によって首の重さを支えられるようになると、首・肩のこりが少なくなるはずです。
また、軽く顎を引いて「うなじを伸ばす」ことで、首の前側の筋肉を使って首の重さを支えられるようになります。そのため、こりやすい首の後ろ側の筋肉はゆるめられるようになります。
「うなじを伸ばす」ことが意識できたら、首の後ろ側の筋肉、首の付け根の筋肉をダラッと抜くイメージをしてみてください。普段より力が抜けて、気持ちがいい感じがするはずです。
これは3-7で説明した、肩の力を抜く感覚とセットで覚えると良いです。
ぜひ実践してみてください。
まとめ
この記事では、正しい姿勢で立つべき理由とそのポイントについて解説してきました。
もう一度、正しい姿勢で立つポイントをまとめます。
- 足の接地面は3点を意識
- 脚の裏面全体を引き上げる
- 膝は伸ばしすぎず真ん中でキープ
- 骨盤を立てる
- 背骨を伸ばす
- 肋骨を締める
- 肩の力を抜く
- うなじを伸ばす
できるものから実践して、身体の不調や疲れを改善していきましょう。
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