「呼吸するだけで疲れてしまう」
「呼吸するのが下手」
「疲れの原因が呼吸の仕方にある気がする」
このようなお悩みを持つ方は少なくないようです。
呼吸は、どのような動物も行うもので、人間も本能的によって普通にできるはずです。
しかし、現代では多くの人が呼吸で悩みを抱えるようになっているのです。
なぜなら、現代人は呼吸するのが下手になっており、それが「呼吸がうまくできない」「疲れがとれない」「首や肩がこる」「睡眠が浅い」「冷え性」「落ち着かない」といった多くの不調の要因となっていると考えられるからです。
そこでこの記事では、
- 呼吸で疲れる原因
- 疲れないための正しい呼吸の仕方
- 普段からできる呼吸のトレーニング
などについて詳しく解説します。
ぜひ興味のあるところから読んでみてください。
1章:呼吸で疲れてしまう原因
それでは、まずは呼吸で疲れる原因から説明していきます。
さまざまな原因がありますが、もっとも根本的な原因は体が正しく使えていないことです。この点については2章で説明し、具体的な対処法は3章以降で説明していきますので、知りたいところからお読みください。
1-1:息の吸い過ぎ(吐ききれていない)
現代人の多くが、息を吸い過ぎで吐ききれていない、と言われています。
誰でも、呼吸は無意識に行っているものですので、吸い過ぎの自覚がある方は少ないでしょう。しかし、この「吸い過ぎ」が現代人の多くの疲れや不調に繋がっているのです。
簡単に説明すると、息を吸う時には交感神経が優位になり、吐く時には副交感神経が優位になります。
これらの神経には、それぞれ下記のような働きがあります。
- 交感神経:身体をストレスや危機に対処できるように、闘争・逃走モードにする。そのため心拍数や血圧が上がる。
- 副交感神経:身体を休めるように働く。心身をリラックスさせるため、心拍数や血圧が下がる。
このような神経の働きがありますので「吸い過ぎ」では、常にストレスに対処できるようなモードになってしまいます。その結果、緊張・興奮している時間が長くなり、疲れが溜まるのです。
「なぜ吸い過ぎになるんだろう?」と思われたかもしれません。
現代人が吸い過ぎになるのは、仕事が忙しい、毎日触れる情報の量が多すぎる、刺激が多すぎる、人ごみで過ごす時間が長い(通勤電車など)、といった社会生活におけるストレスが原因だと考えられます。
ストレスが多いために「吸い過ぎ」になり、身体が興奮状態になり、さらにストレスが溜まっていく、という悪循環になってしまうのです。
これを逆に言えば、息を吐ききれていないということでもあります。
しかし、逆に息を吐きすぎているというパターンもありますので、次に説明します。
※正しい呼吸法については3章以降で説明しています。
1-2:息の吐きすぎ
息の吐きすぎによって、呼吸が疲れるようになっているという方もいらっしゃるようです。
前述のように、息を吐く時には副交感神経が優位になりますので、通常は吐くことによってリラックスできます。
しかし、吐きすぎになっていると身体に必要な緊張がなくなり、ある程度の興奮が必要な仕事中などでも「眠い」「だるい」といった状態になることもあるのです。
一般的には、息の吸い過ぎの人の方が多いと思われますが、吐きすぎも問題があるということです。
後に解説しますが、吸うことと吐くことは、ちょうどいいバランスが保たれていることが重要になります。
具体的には3章で説明します。
1-3:呼吸が浅い、止まっている
呼吸が疲れるという人の多くは、呼吸が浅くなっている場合や、呼吸が頻繁に止まっている可能性もあります。
普通に生活しているときに、下記のような呼吸になっていませんか?
- 「ハッ、ハッ」というような浅く、頻度の高い呼吸をしている
- 呼吸しているかどうか外から分からないくらいの小さな呼吸
- 息をつめている(止めている)ことが多い
このような呼吸は、ストレスから身体が緊張している人に多いです。浅い呼吸や、息を止めてしまうという人は、肋骨やお腹が固くなって動きにくくなっているために、十分に吸えず、吐けない状態になっています。
また、それゆえに身体が十分にリラックスできず、さらに緊張する、疲れるという悪循環になってしまうのです。
メモ
実は呼吸が浅いこと自体が悪いわけではありません。緊張し、肋骨やお腹が固くなった結果浅くなってしまっている呼吸が問題なのです。
ちゃんとした呼吸ができていれば、普段の呼吸は小さいものでも酸素が十分に足りるようになります。詳しくは後ほど説明します。
1-4:心と体が緊張している
ここまで説明してきたように、呼吸が疲れるという人は、心・体が緊張状態にあります。
心と体は密接に関係していますので、何らかのストレス、不安、悩みごと、精神的負担などを感じていれば、体はストレスに対処するために緊張状態になります。
本来なら、ストレス状態を乗り越えたらリラックスし、心も体も通常の状態に戻ることができます。
しかし、現代社会ではストレス源となるものが多いため、緊張状態が続いて、やがては普通の呼吸のやり方すら分からなくなってしまうのです。
ここまで呼吸で疲れる原因を説明しましたが、より根本的な問題としてあるのは、肋骨やお腹の動きが小さい呼吸になってしまっていることです。これから説明します。
2章:呼吸で疲れるのは肋骨、お腹の動きが悪くなっているため
ここまでも簡単に触れたように、肋骨、お腹の動きが小さいと不自然な呼吸になり、呼吸で疲れるようになってしまいます。
肋骨、お腹の動きが小さくなってしまっている原因として、下記のようなものがあります。
2-1:ウエストを細く見せようとしている
男女限らず、現代ではウエストが細いことが美の基準の1つになっています。
そのため、ウエストを締め付けるようなパンツ、スカートを履いたり、お腹に力を入れて凹ませることを癖にしてしまっている人が少なくないようです。
このようなことをしていると、呼吸時のお腹の動きを阻害してしまいます。
詳しくは2章で説明しますが、お腹がしっかり動くことが、正しい呼吸に必要不可欠なのです。
2-2:胸を張っている
胸を張っているために、肋骨やお腹の動きが悪くなっている場合もあります。
「胸を張る」という動きをすると、肋骨と繋がっている部分の背骨(胸椎)を緊張させてしまい、肋骨の動きを阻害してしまうためです。
しかし、胸を張る姿勢が「いい姿勢」だと思って、いつも意識しているという方も少なくありません。その結果、肋骨の動きが悪くなり、呼吸で疲れるようになってしまうのです。
2-3:胸式呼吸での問題
胸式呼吸が癖になっている場合も、肋骨やお腹の動きが固くなり呼吸で疲れる原因になります。
自然な呼吸は本来、胸、お腹、背中という体幹全体が動くようなものです。
これに対して胸式呼吸は、他の部分をあまり動かさず胸だけを使って呼吸するものです。
①で説明したように、ウエストを締め付けたり、お腹を凹ませたまま呼吸しようとすると胸式呼吸になりますし、また緊張などで横隔膜が動きにくくなっている場合も、胸式呼吸になりがちです。
胸式呼吸だと、本来呼吸で使うべき筋肉を使わずに呼吸してしまうため、呼吸するほど疲れが溜まってしまいます。
メモ
ただし、胸式呼吸が常にダメというわけではありません。激しい運動時などはどうしても胸式呼吸になってしまいます。緊張などによって、常に胸式呼吸が癖になっているような場合がよくないということです。
2-4:腹式呼吸での問題
「腹式呼吸の方がいい」と聞いたことがある方は少なくないと思います。確かに、正しく呼吸するとお腹がしっかり動きますし、正しい腹式呼吸をするならいいことです。
しかし「腹式呼吸をしているはずなのに疲れてしまう」という方もいらっしゃいます。
このような方は、お腹を動かすことを意識しすぎて、
- 肋骨の方をほとんど動かしていない
- お腹を前側にばかり動かし、背中側に空気を入れていない
といった場合があります。
これも、後に解説する正しい呼吸とは異なるため、無駄な身体の使い方をしており、呼吸で疲れる原因になります。
このように原因を説明すると「正しい呼吸は難しそう」と思われるかもしれませんが、コツさえ分かれば難しくありません。そもそも、誰もが子供のころは自然で疲れない呼吸をしていたのですから。
そこでこれから、呼吸で疲れる場合の対処法と疲れない呼吸の方法を説明します。
3章:呼吸で疲れる場合の3つの対処法
呼吸で疲れてしまう方は、下記のポイントを押さえて呼吸するようにしてみてください。
- リラックスする
- 吸う時間、吐く時間を意識する
- 体幹全体を使って呼吸する
順番に説明しますので、1つ1つ順番に行ってみてください。
3-1:リラックスする
疲れない呼吸をするためには、まずはリラックスして全身から余計な緊張をなくすことが大事です。
疲れてしまうような間違った呼吸をしてしまうのは、胸、お腹、背中などに緊張が強く、本来動くべき部分が動かなくなっているからです。
そのため、何度か深呼吸して、全身の力を抜くようにしてみてください。
3-2:吸う時間、吐く時間を意識する
前述のように、呼吸では吸うときに交感神経優位(=興奮)、吐く時に副交感神経優位(=リラックス)になりますので、吐く時間を長くするように呼吸することが大事です。
さらに、途中で息を止める時間もあった方が「吸い過ぎ」を避けられるためおすすめです。
そこで、下記のようなペースで呼吸してみてください。
3秒吸う→9秒かけて吐く→3秒止める
これをずっと続けてみましょう。時間はだいたいでいいですが、1:3:1くらいの配分で呼吸すると疲れにくいと言われています。
たとえば、2秒吸う→6秒吐く→2秒止める、でも構いませんし、慣れたらもっと長くしていくといいでしょう。
もちろん、これはじっとしているときのものですので、歩いているとき、走っているときなどはもっと短いペースになると思います。
常に意識しなければならないというわけではなく、1日の中で余裕がある時に意識して、いい呼吸癖をつけていくことが大事です。
まずはここまで説明した「リラックスする」「吸う時間、吐く時間を意識する」だけでも意識するようにすると、呼吸で疲れにくくなるはずです。
3-3:体幹全体を使って呼吸する
呼吸で疲れないためにさらに大事なのが、これから説明する体幹全体を使って呼吸する方法です。
端的にポイントを言えば「胸、お腹、背中全体を膨らませるように吸い、これら全体がへこむように吐くこと」が大事です。
具体的に説明していきます。
《吸う時のポイント》
(1)胸、腹を360度膨らませるように吸うこと
まず、息を吸うときは胸からお腹まで全部を膨らませるように吸うことが大事です。
よく「お腹を膨らませるように呼吸しよう」とか「胸を膨らませないようにしましょう」と言われることがありますが、どこか一部を膨らませるような呼吸は、日常においては避けたいです。
むしろお腹から胸、そして背中まで、体幹が360度膨らむような呼吸を行うことが大事です。
■ポイント
肋骨の一番下あたりに左右の手を当てて、そこがお腹側、背中側に同じだけ膨らむように息を吸うようにしましょう。
(2)吸う時間は長くしすぎないこと
息を吸うときはゆっくり吸い続けず、3~4秒くらいで吸ってしまうことが大事です。
もう少し詳しく言うと、吸う時間と吐く時間、そして吐いた後に止める時間が「1:3:1」くらいか「1:4:1」くらいになるのが理想です。
(3)姿勢を崩さないこと
大きく息を吸おうとすると、
- 胸や腰を反らせる
- 首を上向きにする
などの動きをしてしまう方もいますが、このような動きはしないようにしてください。
こうすると、呼吸する上で本来不必要な筋肉を使ってしまい、余計な疲れになるからです。
そのため、前述した正しい姿勢を維持したまま、腰も胸も反らせずに吸うことが大事です。
正しい姿勢については下記の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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《吐く時のポイント》
(1)肺の中の空気をすべて吐ききるように吐く
上記のように息を吸ったら、次に肺の中の空気をすべて吐ききるようにして吐いてください。
呼吸が浅くなってしまっている多くの方は、吐いているつもりでも吐ききれておらず、肺の中に空気が残っているのにまた吸ってしまう、ということを繰り返しています。
■ポイント
呼吸法のトレーニングとして行うときは「吐ききった」と思ったところから、さらに頑張って吐ききるようにしましょう。
(2)胸、腹が360度縮むように吐くこと
息を吐く時も、胸、腹、背中が同じだけ縮むように吐くことが大事です。
吸うときと同じように、肋骨の一番下を手で触りながら、4つの点が同じだけ縮むように意識して吐いてください。
慣れるまでは、実際に触って行うとやりやすいです。
(3)吐いた後数秒息を止めること
息を吐ききったら、それから数秒は息をとめてみてください。息を止めることで、さらに体内の酸素が消費され「体内の酸素がなくなってから吸う」という健全な呼吸ができるようになります。
この呼吸法をトレーニングして習慣化すれば、普段から呼吸が深くなり、疲れにくい身体になっていきます。
むしろ、呼吸することで身体がリラックスし、疲れがとれるようにもなっていけるはずです。
まとめ
最後にもう一度、呼吸で疲れてしまう場合の対処法をまとめます。
- リラックスする
- 吸う時間、吐く時間を意識する(3秒吸う→9秒かけて吐く→3秒止める)
- 体幹全体を使って呼吸する(お腹、胸、背中まで全体が膨らむように)
ぜひ実践してみてください。
